全 情 報

ID番号 04303
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 三協工業事件
争点
事案概要  遅刻・早退が著しく多いことを理由とする懲戒解雇が有効とされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務懈怠・欠勤
裁判年月日 1968年8月10日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和41年 (ヨ) 2284 
裁判結果 棄却
出典 時報536号78頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務懈怠・欠勤〕
 《証拠略》を総合すると、申請人の昭和三七年三月一七日入社以来の遅刻回数、遅刻時間合計は、昭和三七年三月一七日から同年一一月一五日間に四八回、七〇一分、同年一一月一六日から同三八年五月三一日間に二八回、八三五分、同年六月一日より同年一一月三〇日間に一六回、九三三分、同年一二月一日から同三九年三月三一日間に二〇回、一、三二八分、同年四月一日から同年九月三〇日間に一八回、九七七分、同年一〇月一日から同四〇年三月三一日間に一六回、一、〇〇八分、同年四月一日から同年九月三〇日間に三一回、二九八一分、同年一〇月一日から同四一年一月一〇日間に二二回、九〇三分と東京営業所において他に比べる者がない程の遅刻者であり、上司から再三注意されたが前記のように遅刻回数、時間数ともに減少しなかったことが一応認められ(る。)《証拠判断略》
 (2) 勤務内容について
 《証拠略》を総合すると、次の各事実が認められ、申請人本人尋問の結果中これに反する部分は採用できない。
 (イ) 申請人は昭和三九年七月一日から同四〇年七月末日まで国鉄関係の営業を担当していたところ、同四〇年二月頃、国鉄本社資材局からの高圧ポンプの受註に際し、申請人は当時入社以来相当の年数が終っていたから、通常の営業担当者であれば、研究してポンプの性能等商品の知識を豊富にもっているべきなのに、研究不足のためこれに欠け、そのため資材局に対して右ポンプが特殊なものであるのに普通ポンプであるかのように説明して、誤解をまねき、同局およびポンプメーカーから厳重な注意を受け、そのため安い価格で売渡すことを余儀なくされた。
 またその頃東京鉄道管理局電気部から申請人の上司に対して申請人の勤務が不熱心であるとの苦情がなされた。
 (ロ) 同四〇年八月一日から地方自治体の水道工事担当に配置換になったところ、被申請人は従来東京都調布市役所水道部の上水道さく井工事の指名を受けていたが、同年一〇月、一一月の二回にわたり右指名をはずされる事態が発生した。右指名関係は申請人の担当であったところ、平素係員と接触を密にしておれば、指名を外されることはないのであって、右の事態は申請人がこれを怠ったため生じた。
 (ハ) 昭和四〇年一一月申請人は佐倉市のさく井工事の入札に赴くことになったところ、入札日の前日までに入札価格が決らなかったため、営業部A次長は申請人に、入札日の朝、七時三〇分頃にAの自宅に電話連絡するよう指示したが、申請人はAの自宅電話番号を失念したため、連絡することができず、午前九時頃、本社に電話し、B営業課員から入札価格を聞き、ようやく知ることができた。右入札については、現場で当初予定されていたさく井工事にポンプ敷設工事が追加されて工事仕様変更があったところ、右変更は仕様変更価格が予定価格の四〇%以上になる大きなものであるから申請人のような平社員が独断で入札することができないにも拘らず、申請人は右変更について本社に連絡せず追加工事を無断で一〇〇万と評価して、予定工事と合計して二五〇万円で入札した。そして、申請人は当時右の件について上司から厳重な注意を受けたが、別段自分の行為について反省する気配を示さなかった。
 (3) 《証拠略》によると、被申請人の就業規則第五五条、第五八条第二号には「勤務状態著しく不良にして改悛の見込ないとき」は懲戒解雇または三〇日分の平均賃金を支給して諭旨解雇(懲戒処分の一種)等する旨規定されていることが一応認められるところ、前述した疎明事実からすると申請人は就業規則の右解雇事由に該当するといわざるを得ない。