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ID番号 04325
事件名 給与支払請求控訴事件
いわゆる事件名 東京都教育委員会事件
争点
事案概要  教職員の行った一斉休暇闘争につき、無断欠勤としてその分の賃金をカットされた者が右減額措置が労基法二四条一項に違反するとしてカット分の賃金を請求した事例。
参照法条 労働基準法24条1項
体系項目 賃金(民事) / 賃金の支払い原則 / 過払賃金の調整
裁判年月日 1967年3月1日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和35年 (ネ) 1020 
裁判結果 棄却
出典 時報472号38頁/教職員人事判例5号281頁
審級関係 一審/04553/東京地/昭35. 4.15/昭和34年(ワ)2284号
評釈論文 吾妻光俊・判例評論101号12頁
判決理由 〔賃金-賃金の支払い原則-過払賃金の調整〕
 前記条例第一六条第一項は、「職員が勤務しないときは、その勤務しないことにつき教育委員会の承認のあった場合を除くほか、その勤務しない一時間につき、第二十条に規定する勤務一時間当りの給与額を減額して給与を支給する。」旨規定しているが、右規定は給与の減額をなし得る場合と、減額の計算方法とを定めたものであって、減額事由が発生した月の翌月以降の給与から減額することを無制限に許容する趣旨を明示していないことは、その文言から明らかである。従って右規定は、減額事由が発生した当該月の給与から減額をなす場合、及び前記判示のとおりその後の月の給与から減額することが例外的に許容される場合に適用されるべきものであって、控訴人主張のように、減額事由の発生した月と合理的なものとして許容される程度に接着した期間内の減額を、一般的に許容した趣旨の規定と解することはできない。控訴人は右規定をその主張のような趣旨に解釈しなければ、本件におけるように減額事由の発生前にその月の給与が支払われている場合には減額が不能となるから、そのような不能を強いる規定と解すべきではない旨主張する。しかし本件におけるような場合にも、原則としてその後到来する減額をなし得べき最初の機会に減額をなし得ると解すべきことは、既に判示したとおりであり、従って同規定は控訴人主張のような趣旨に解釈しなくても、不能を強いる規定ではないし、また適用される場合が考えられない死文といえないことも自明である。もちろん控訴人主張のような趣旨に解釈した方が、使用者にとって便宜であろうことは間違ないが、前掲労働基準法第二四条第一項本文所定の全額払の原則の趣旨を考えれば、同項但書所定の例外の場合は厳格に解釈するのが妥当であるから、控訴人主張のような趣旨であることが規定の文言上明示されていない本件のような場合に、安易に拡張解釈することは慎しむべきである。