全 情 報

ID番号 04328
事件名 雇用契約存在確認請求事件
いわゆる事件名 王子製紙事件
争点
事案概要  社会党員である従業員が、会社外で公衆を前にして統一地方選挙にのぞむ基本的姿勢を明らかにする目的でした演説内容からして従業員としての基本的信頼関係を欠き、安心して業務につかせられないとの理由で休職とし、その満了を理由に解雇された事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法7条
体系項目 休職 / 休職の終了・満了
裁判年月日 1967年3月17日
裁判所名 札幌地室蘭支
裁判形式 判決
事件番号 昭和40年 (ワ) 39 
裁判結果 認容
出典 労働民例集18巻3号572頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔休職-休職の終了・満了〕
 まず、被告は、原告が復職申出の際に被告会社に対し、今後も道議選挙に出馬して、政治活動を続けてゆく意思をもつている旨述べたことをもつて、原告には業務に精励する意思がなかつたと主張するが、本件の全証拠によるも、被告会社がその従業員に地方自治体の議員等に就任することを禁止していることは認められず、むしろ前記認定のごとく就業規則一四条一項四号により、これを許容しているのであるから、単に原告が将来道議選挙に出馬するとの意思をもつていることを表明したからといつて、それをもつて直ちに原告に業務に精励する意思がなかつたと即断することはいかにも早計であるといわなければならない。
 また、被告は、原告の会社内における地位とその社会的な地位との間に大きな隔りがあるから原告が復職しても他の従業員と協調して円滑に仕事をすることができるとは考えられないと主張するけれども、証人Aの証言によれば、もともと原告が道議に選出されたのは、被告会社等の従業員の代表者としてであつたことが認められるから、その経歴により、他の従業員との関係で特に社会的に大物となつたと評価することは当らないというべきであるし、しかも原告はその経歴にもかかわらず、自ら進んで被告会社の一従業員として復職することを希望しているのであるから、他に特段の理由もないのに、そのことだけから直ちに、原告が復職した場合に、他の従業員と協調して円滑に仕事をすることができないものと認定することは困難である。
 さらに、被告は原告が被告会社における業務経験に乏しく、その習得した技術能力の程度も低く、かつ被告会社にはこのような原告に適する職場もなかつたと主張するが、前記認定の原告の経歴と原告本人尋問の結果とによれば、原告は普通の健康体であり、少くとも普通人以上の精神的能力ないし素質をもち、かつ被告会社に対しても、苫小牧工場以外であればともかく、苫小牧工場であればその特定の職場に就かせるべきことを固執していたものでないことも認められるから、これらの事実と、当裁判所に顕著な被告会社の苫小牧工場の規模とからすれば、被告会社において、原告に就かせるべき職場ないし職種が全くなかつたとは容易に認められない。
 (中略)
 以上の次第で、原告について、就業規則一四条一項六号の「適職が与えられない」理由があつたとの被告の主張は、これを個別的にみても、また総合してみても、結局採用することができず、したがつて、そのような理由により、被告が原告に休職を命じ、その休職期間の満了を理由として原告を解雇した処分は、その余の点を論ずるまでもなく無効であるといわなければならない。