全 情 報

ID番号 04346
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 名鉄運輸事件
争点
事案概要  組合の分裂に伴ない二つの組織が組合員の獲得等、その勢力の維持、拡大をめぐって対立、抗争しているときになされた少数派組合員に対する業務不適格を理由とする解雇が不当労働行為にあたるか否かが争われた事例。
参照法条 労働組合法16条
労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 解雇権の濫用
裁判年月日 1967年9月28日
裁判所名 宇都宮地
裁判形式 決定
事件番号 昭和41年 (ヨ) 107 
裁判結果 認容
出典 労働民例集18巻5号922頁
審級関係
評釈論文 野村豊弘・ジュリスト423号141頁
判決理由 〔解雇-解雇権の濫用〕
 被申請人が主張する如く、前記二の(九)の(1)ないし(10)並びに同(一三)の各事実をもつて、就業規則第三三条第九号に定める「如何なる業務にも不適当と認められる」事情であるということはできず、他に申請人等が如何なる業務にも適さない事情があると認むべき疏明がないのみならず、前記認定の如く、会社としては、全自運が共産党に指導された斗争至上主義に立つものとしてこれを嫌い、被申請会社の組合が全自運から脱退すべきことを示唆していたこと、残留派の組合員が全自運Y会社支部の再建大会を開催するについて会社の管理職の者がその出席者の監視をしていたこと、右再建大会後、全自運Y会社支部労組からの数度に亘る団体交渉の申入れに対し、会社では同組合の存在を認めないとの理由で終始これに応じなかつたこと、本件では全自運への残留を主張する全自運Y会社支部労組の執行部役員の全員が解雇されていること、しかも、同じ執行部役員の一人であつたAは、解雇前に全自運Y会社支部から脱退してY会社労組に加入する態度をとつたので、Y会社労組からの除名が撤回され、その結果、本件の解雇対象からも除外されていること、甲第二六号証の一・二によると、会社が発行する「B」という社内報第六二号(昭和四一年三月号)に、その勤務状況がまじめであると報じられている申請外Cも、右解雇された中の一員に含まれていることが認められ、これらの事実に鑑みると、被申請会社が申請人等を含む前記六名の者を解雇したのは、全自運からの脱退決議を契機として事実上分裂した二つの労働組合の対立がかもし出す企業内の不安状況を、会社の嫌う全自運Y会社支部労組を企業内から排除しもしくは壊滅状態にすることによつて解消しようとする意図の下になされたものと認めることができ、このことは、申請人等を全自運Y会社支部労組に属することによつて不利益な取扱いをするものであり、労働組合法第七条第一号に該当する不当労働行為であるというべく、従つて本件解雇の意思表示は、この点において無効であるといわざるをえない。