全 情 報

ID番号 04349
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 鈴木運送事件
争点
事案概要  運送会社の運転手が非常信号用赤色旗とその担当車両への備付けを拒否したことを理由に解雇され、その効力を争った事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号
労働基準法2章
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 業務命令違反
裁判年月日 1967年10月4日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和40年 (ヨ) 2111 
裁判結果 棄却
出典 労働民例集18巻5号971頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-業務命令違反〕
 次に、申請人らが運転手であることは当事者間に争いがなく、赤色旗の担当車輛への備付けは自動車運送事業等運輸規則(道路運送法にもとづく運輸省令四四号)四六条一項、二九条二項により事業主に課せられた義務であつて、運転手に課せられた義務ではないのみならず、申請人らの本件赤色旗受領拒否の結果、申請人ら担当車輛中非常信号用赤色旗の備付を欠くに至つたものが生じたことを疎明するに足りる資料はないから、申請人らの右行為は、就業規則四〇条一号にも該当しない。よつて、この点に関する被申請人の主張も理由がない。
 もつとも、申請人らの前示行為は、すくなくとも上司の業務上の指示に従わないものであることは明らかであり、前認定の就業規則二六条七号か、あるいはそれに準ずるものとして同条一四号に該当するものといわざるを得ない。従つて、この点に関する被申請人の主張は理由がある。
 (中略)
 申請人らが前示の如く本件赤色旗の受領を拒否した主な動機、原因は、その出所が同人らにとつて被申請人の御用組合的存在にみえるA会であるため、いわば感情的に反撥したものであることが認められる。そして、公印の印影部分の成立は当事者間に争いがなく、その余の部分の成立は証人Bの証言により認めうる疎乙一七、一八号証、同二六号証、同証人の証言、証人Cの証言、および同証言により成立を認めうる疎乙二二号証、申請人ら本人の各供述を総合すれば、被申請人は、表彰規定などを制定するにつきA会長Dを従業員代表者として扱つていること、またその際A会の意見を徴するだけで申請人らが、組織する全金Y社分会の意見を徴しなかつたことがあること、A会は全金Y社分会員以外の者で構成され、被申請人と利害を対立する団体というよりむしろその協力的団体ともいうべきものであること、などの事実が認められ、右認定を覆すに足る証拠はない。以上の事実関係に照らせば、申請人らがA会をいわゆる御用組合的存在であると考え、感情的に反撥して赤色旗の受領を頑強に拒否した心理も理解できないことではない。しかし、他方、本件業務命令が出されるにいたつた前認定の経緯、申請人らの前記拒否行為が一応就業規則違反と目すべきことは前記認定のとおりであること、被申請人は法規により赤色旗の車輛への備付けが義務づけられていること等を考えあわせると、申請人らが前記のような感情的理由だけで赤色旗の受領を拒否したのは必らずしも拒否理由として十分な根拠を有するものといい難く、これに対し被申請人が、順次けん責、減給処分を以つて臨んで本件赤色旗の受領を促し、その効がないので遂に本件の解雇の意思表示をなしたのは、企業秩序を維持するうえでやむをえない措置であるというべきであつて、これをもつて重きにすぎるとか、同一行為に対する二重の処分とかいうのはあたらない。それ故本件解雇を以て解雇権の濫用であるとする申請人の主張は理由がない。