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ID番号 04359
事件名 行政処分取消請求訴訟事件
いわゆる事件名 茨城県教育委員会事件
争点
事案概要  高年齢者である学校教員がした退職願の撤回につきその効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法2章
地方公務員法27条
地方公務員法28条
地方公務員法29条
体系項目 退職 / 退職願 / 退職願いの撤回
裁判年月日 1967年12月11日
裁判所名 水戸地
裁判形式 判決
事件番号 昭和40年 (行ウ) 9 
裁判結果 棄却
出典 行裁例集18巻12号1584頁/タイムズ219号195頁/教職員人事判例5号95頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔退職-退職願-退職願いの撤回〕
 原告が教育の人事につき他の権力者の介入を排除してその公正を希求するのであれば、自己の意思に反する退職勧奨を拒絶し得ることは過去の体験に鑑み知悉していたのであるから、当初から退職勧奨を拒否すべきであり、このことなくして一箇月余も経過し、免職発令の三日前になつて退職願を撤回して退職勧奨拒否の態度に出るというようなことは、高校教諭の地位に在る者の態度として理解に苦しむところである。さらに、前顕諸証拠によれば、Aがほか数名の者とともに残留できたのは、退職勧奨拒否の態度を終始変えなかつたからにほかならず、この点についてAと他の者との間に径庭がないことが認められる。その他原告のした退職願の撤回について吾人を肯首させる合理的根拠は見出しがたい。他方被告としては、前述したように、昭和三九年一二月校長を介して教員に対し勤務先に関する希望を徴した際、原告は自発的に退職勧奨に応ずる意思のあることを表明しており、また原告の家族関係、家計の状態、退職勧奨に対する態度等から考えて、原告の勧奨応諾の意思に変動はないものと考え、日を重ねるに従いその期待ないし信頼はその度を加え、原告の退職を前提として後任人事の手続を進めたことは前認定の諸事実に照らし明らかである。
(三) 以上に認定した撤回者である原告と任免権者である被告の双方に存する諸般の事情を比較検討すると、原告のした前記撤回の意思表示は信義に悖り許されないものといわなければならない。