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ID番号 04363
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 旭光学工業事件
争点
事案概要  欠勤に関連して退職願を提出した従業員が右の退職願は会社の威圧によって書かされたとしてその効力を争った事例。
参照法条 労働基準法2章
民法96条
体系項目 退職 / 退職願 / 退職願と強迫
裁判年月日 1967年12月20日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和37年 (ヨ) 2212 
裁判結果 認容
出典 労働民例集18巻6号1267頁/時報509号22頁
審級関係
評釈論文 安田叡・労働法律旬報672号9頁/野村豊弘・ジュリスト420号120頁
判決理由 〔退職-退職願-退職願と強迫〕
 以上(一)(二)の事実をそう合すると、いわゆる民青活動とか労働組合活動とかを極度に嫌悪していた被申請会社は、申請人がこの種活動をしているものと考えて長期間の病気欠勤を機会に申請人を会社より追放せんとし、A係長をして前示の如く午前八時半から午後七時頃までの長時間一室において執拗に退職を強要させたものであつて、当時申請人が二一、二才の年若い女性であり、しかも病気上りで、おそらく肉体的にも精神的にも不安定な状態にあつたものと推測されることを考慮すれば、前記強要は申請人をして全く意思の自由を喪失させる程度には至らないが、すくなくとも威圧によつて申請人に辞職願を提出せざるを得ない状態に追い込んだものであつて、民法第九六条にいう強迫にあたるものと解すべきところ、申請人本人尋問の結果によると翌四日申請人はA係長に面会し、前記辞職願は自分の意思に基づくものではないと明言してこれを同係長の面前で破つたことが疎明される(証人Aの証言中右一応の認定に反する部分は措信しない)から、前記辞職願提出によつて一旦なされた申請人の本件雇傭契約解約の意思表示は、翌四日取消されてその効力を失つたものというべきである。