全 情 報

ID番号 04544
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 財団法人電気通信共済会職員事件
争点
事案概要  提出した履歴書に不実の記載があったことおよび身元保証人が保証人を辞退したことを理由としてなされた解雇の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 経歴詐称
労働契約(民事) / 身元保証
裁判年月日 1960年2月15日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和33年 (ヨ) 4074 
裁判結果 認容
出典 労働民例集11巻1号111頁/時報216号28頁/タイムズ102号66頁
審級関係
評釈論文 加藤俊平・ジュリスト227号74頁
判決理由 〔解雇-解雇事由-経歴詐称〕
 申請人は被申請人の課長の地位にある義弟のAの紹介によつて被申請人に雇傭されたのであるが、その前同人から、被申請人に提出する履歴書は簡単なものでよいといわれて作成提出したのが前示のような記載のある履歴書であつたところから、申請人は、B人課長の面接をうけた際にその履歴書は極く概略を記載したもので、必要ならば更に詳しいものを提出する旨申出たが、同課長から、清掃作業員については経歴はあまり関係がなく、体力だけが重視されるのであるからその必要はないといわれたけれども、履歴書に記載しなかつた経歴の概略について口頭で同課長に説明したこと、申請人は、被申請人に雇傭された後昭和三三年五月頃になつて、被申請人から、雑誌の編集長をしていた当時の経歴及び出版事業に携つていた当時の経歴を追加する履歴書を提出したことが認められ、反対の疏明はない。
 してみると申請人が被申請人に提出した履歴書においてことさらに不実の記載をしたり経歴の一部を秘匿したりしたものとは考えられない。したがつて、申請人が被申請人に提出した履歴書に不実の記載があつたことを以て準職員規則第九条第五号にいわゆる「職務に必要な適格性を欠く」という免職事由が申請人にあつたとする被申請人の主張は根拠のないものというべきである。
〔労働契約-身元保証〕
 ところで申請人の身元保証人が右のとおり辞退届を提出した理由について、申請人本人の尋問の結果中に、被申請人の当時の理事Cの要求によるものである旨の供述があるが、その採否はここでしばらく措くとして、上掲乙第六号証には、申請人の性格等に鑑み身分上の保証をし兼ねる旨の記載が見られるとはいうものの、この記載を裏付けるに足りるような事実やその他申請人の身元保証人がなくなつたことが被申請人の準職員としての申請人の「職務に必要な適格性を欠く」ことを徴表するものであることを認め得る疏明はない。