全 情 報

ID番号 04658
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 塩田組事件
争点
事案概要  上司の許可を得ないでしばしば無断で私用のため外出した等として懲戒解雇された者がその効力を争った事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職場離脱
裁判年月日 1957年4月11日
裁判所名 神戸地
裁判形式 判決
事件番号 昭和31年 (ヨ) 578 
裁判結果 認容
出典 労働民例集8巻2号199頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職場離脱〕
 職場離脱は前記のように出先からともかく電話で連絡をとつて居所を明らかにして居り、その時間も比較的短時間であること、広言、放言はあつたけれども、そのなされた場所相手方との関連からみて軽率のそしりは免れないとしても、さして悪意のあるものともみられず会社の秩序を乱す程のものと考えられないこと、文書の配付行為は待機時におけるものもあるがその他は果して就業時間中かどうかを定めるべき疏明もなく、待機時のそれは、前記待機時の実情に徴して直ちに作業実施中のそれと同一に論ぜられないこと、以上の事柄に、なお、これ等の事実が生じたのは前示のように債権者も尽力して組合を結成し自ら組合長となつて奔走していたが、債権者本人尋問の結果によつて明らかなように債権者において組合運動にいまだ経験が浅く、そのことが一半の原因ともなつているとみるのが相当である点を考え合せるならば、債権者の前示の各行為は、その情状において軽微であると判断される。
 債務者は、会社は経営不振で信用金庫の財産保全管理下にあり従業員としても職務に精励すべきことが要請される旨主張し、証人A、同Bの証言によれば会社がC信用金庫の管理下にあることは認められるが、そのため従業員としても特段の勤勉が期待されているとしても、債権者の行為は右認定の程度であるから、いまだ右の判断を左右するものと考えられない。又債務者は、債権者の所為はさきの解雇が示談によつて取り消された際債権者が会社に差し入れた誓約に反する旨主張するが、成立に争のない乙第一号証の右誓約書の記載自体からは債権者の右認定の程度の所為でも解雇事由となる趣旨は読みとれないし、この誓約がどのような経緯によつてなされたものかの点の疏明もないからこれまた右の判断に影響を及ぼさない。
 そうであるから、債権者に対し警告を与える等他にとるべき何等かの方法があつたかどうかはしばらくおき、会社が債権者の前示の行為に対し直ちに解雇をもつて処断することは著しく苛酷というほかなく従つて本件懲戒解雇は就業規則の適用を誤つたもので無効といわねばならない。