全 情 報

ID番号 04661
事件名 仮処分控訴事件
いわゆる事件名 紡機製造事件
争点
事案概要  解雇された者が解雇の効力を停止する仮処分を申請したのに対し、右解雇の効力を停止する旨の仮処分が発せられ、その後人員整理を理由として再度の仮処分がなされ、これについても効力を停止する仮処分が発せられた場合において、使用者が第一次の解雇の意思表示を撤回して第二次解雇までの賃金を支払う意思表示をしたことにつき第一次仮処分の申請の意義が争われた事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 解雇(民事) / 解雇と争訟・付調停
裁判年月日 1957年5月15日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 昭和29年 (ネ) 1313 
裁判結果 取消・却下
出典 労働民例集8巻3号359頁
審級関係 一審/00014/神戸地/昭29.11. 5/昭和29年(ヨ)478号
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇と争訟〕
 被控訴人が控訴会社の職員であつたこと及び控訴会社が昭和二九年八月一三日被控訴人を解雇する旨の意思表示をなしたことは当事者間に争なく、控訴会社が昭和三一年一一月二九日被控訴人に対し書留内容証明郵便による書面をもつて右解雇の意思表示を撤回する旨の通知をなし該書面が翌三〇日被控訴人に到達したことは被控訴人が明らかに争わないのでこれを自白したものと看做すべきところ、控訴会社のなした右解雇の意思表示の撤回は被控訴人が右解雇の意思表示の効力を争い雇用関係の存続を主張するのに対応し、控訴会社自ら右解雇の意思表示を効力なきものとし被控訴人の雇用関係を従前どおり継続せんとするものであつて、しかも被控訴人の求めて已まないことであることは弁論の全経過に徴し明らかであるから、右解雇の意思表示は被控訴人の挙示する無効原因の有無に拘らず控訴会社のなしたその撤回によつて効力を失い被控訴人の雇用関係は依然として存続するものとなすを相当とする。
 しかるところ、控訴会社が被控訴人に対し既に右解雇当日から昭和二九年八月一三日から同年一二月三一日までの賃金の支払を了していること及び前示解雇の意思表示の撤回と同時に昭和三〇年一月一日から同年八月一〇日までの賃金を支払う旨通知したことは被控訴人の明らかに争わないところであつて、右事実に徴するときは控訴会社においては被控訴人の雇用関係を認め右解雇の意思表示によつて惹起される解雇状態に絡まる紛争を避けんとすることが認められるので、被控訴人がその雇用関係に基く職員たる地位を保全するため右解雇の意思表示の効力を停止し控訴会社の任意履行を求める本件仮処分はもはやその必要なきに至つたものと認めざるを得ない。尤も控訴会社においては前示賃金支払の通知をなすについて賃金を昭和三〇年八月一〇日までの分に止めその後の分に言及していないのであるが右は被控訴人がその成立を明らかに争わない乙第三四号証によると控訴会社が本件解雇の意思表示をなした後である昭和三〇年八月一〇日改めて人員整理の必要から被控訴人に対し解雇の意思表示をなししかもその効力について被控訴人の争うところとなり既に該効力を停止する旨の仮処分命令(神戸地方裁判所昭和三〇年(ヨ)第三七七号事件)が発せられていること(この事実は被控訴人の明らかに争わないところである)に因るものであることが窺われるのであつて、これがために本件解雇の意思表示の効力までも停止する必要があるものとなすことは相当でない。
 そうすると、本件仮処分申請はその必要性を欠き理由なきものといわなければならない。