全 情 報

ID番号 04679
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 東豊工業事件
争点
事案概要  事業不振を理由として事業を廃止することによりなされた従業員の全員解雇の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法20条
労働基準法89条1項3号
労働組合法7条1号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 企業解散・事業の一部廃止・会社制度の変更
裁判年月日 1959年2月6日
裁判所名 静岡地沼津支
裁判形式 判決
事件番号 昭和33年 (ヨ) 206 
裁判結果 却下
出典 労働民例集10巻1号16頁
審級関係
評釈論文 加藤和夫・ジュリスト194号86頁
判決理由 〔解雇-解雇事由-企業解散・事業の一部廃止〕
 申請人ら主張のように被申請人が事業不振でもないのにかかわらず、申請人らの組織する労働組合を弾圧しこれを解消せしめる目的を以て工場を閉鎖して従業員全員を解雇、あまつさえ会社を解散することは法によつて認められた労働者の権利を不当に侵害する行為であつて許すべからざる不当労働行為でありこのような目的に出た解雇の意思表示は勿論その効力を生じ得ないものといわねばならない。
 そこで本件疎明資料を検討するに、被申請人の経営状態については申請人の提出した全資料によつてはこれを知り難いところ被申請人本人X尋問の結果とこれにより真正に成立したと認められる乙第九号証、証人Aの証言、同人の証言により真正に成立したものと認められる乙第六号証、証人Bの証言を総合すると、被申請人会社は昭和三十三年初頃よりその事業は不振の一途をたどり右会社としては比較的多額の欠損を生じたこと、製品不良のためその他の理由により得意先からの信用を失つていたところ同年八月初め主たる得意先であるC株式会社から注文を打切られた外従来の顧客の大部分を失うような最悪の事態に直面し、会社の経営を維持するにつき経営者たるAらは進んで右難局を打開して事態を収拾するの意欲を失い遂に工場を閉鎖し従業員全員解雇を通告し、さらに同年十月に至り会社を解散するに至つたことが一応疎明される。申請人提出の疎明のなかには右認定に反する資料もないではないが右の認定を覆すに足るものはなく、従つて申請人ら主張のように申請人らの労働組合を弾圧し、その正当な組合活動を阻止し組合の解消を企図しての工場閉鎖又は解雇であるとは認められず、本件解雇を以て直ちに不当労働行為として無効と断ずることができない。また解雇権の濫用と考えることもできない。