全 情 報

ID番号 04698
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 日鉄鉱業二瀬事件
争点
事案概要  解雇され従業員たる地位を失っている者等の強行就労に対して使用者が事業所構内立入禁止の仮処分を申請した事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 就労請求権・就労妨害禁止
裁判年月日 1959年10月13日
裁判所名 福岡地飯塚支
裁判形式 決定
事件番号 昭和34年 (ヨ) 37 
裁判結果 認容
出典 労働民例集10巻5号945頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-就労請求権・就労妨害禁止〕
 経営者はその事業の経営権、生産設備等の生産手段の占有権ないし所有権に基いて従業員としての地位を有しない第三者が経営者の意思に反してこれに立入ることを禁止できるのは勿論である。然らば従業員としての地位を有する労働者に対しては如何に考えるべきであろうか。凡そ労働契約においては、労働者は使用者の指揮命令に従つて労務を提供する義務を負い、使用者はこれに対して一定の賃金を支払う義務を負うものであつて、労働協約等で特別の定めをなした場合、或は業務の性質上労働者が労務の提供をするについて特別の合理的な利益を有する場合を除いては一般的には労働者は就労請求権を有しないものと解すべきである。それ故仮に本件解雇が無効であつて被申請人等が今なお従業員としての地位を有するとしても申請人会社は前記各権利に基いて、被申請人等の事業場内への立入りを禁止できるものと解すべきところ、申請人会社の本件申請の理由には右の事由を含むものと解するのが相当である。
 被申請人等は企業整備反対闘争の手段として強行就労をすることは労働者の団体行動権の行使であるから、所有権を侵害するという理由で事業場への立入を禁止することは許されないと主張するけれども、本件の強行就労が組合ないし組合員の団体行動権の行使であると理解することができるとしても、団体行動権といえども無制限な行使が許されるのではなく、所有権、占有権その他の財産権を侵害しない限度において許容されるものといわなければならない。
 被申請人等が強行就労するため事業場内に立入らんとして、これを制止せんとする申請人会社職員と揉み合い十数人の負傷者を出したこと、職場における指揮命令系統が申請人会社のそれと組合のそれとに二分されて、職場の秩序が混乱し、そのために申請人会社の事業の遂行に少なからざる支障を生じていることは疏明されている。