全 情 報

ID番号 04705
事件名 解雇無効確認/賃金請求事件
いわゆる事件名 帝都自動車交通事件
争点
事案概要  二カ月の臨時雇として雇用された自動車運転手が繰り返し更新を重ねたのち特段の措置をとることなく臨時工として雇用され、メーター不例行為を理由として解雇されたのに対し雇用契約関係の存続を求めて訴えを提起した事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
解雇(民事) / 解雇事由 / 不正行為
裁判年月日 1959年11月17日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和31年 (ワ) 2901 
裁判結果 棄却
出典 タイムズ100号78頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 原告は、第一次の請求の原因として、被告に雇傭される際、二カ月経過後には自動的に本雇となり、「本雇としての賃金」を支給される約束であつたから、二カ月後の昭和二九年八月一日からは、被告との間に本雇の自動車運転者としての雇傭関係をもつに至つた、と主張し、真正にできたことに争いのない乙第三号証および原告本人尋問(第一回)の結果によると、原告は、被告に臨時雇として雇傭されるに際し、被告に差入れた「労働契約」と題する書面(乙第三号証)に「臨時期間満了した者は成績その他を審査の上優秀な者に限り本採用とする」との条項のあることを知つていたが、常識上二カ月間たてば、自動的に本雇となるものと考えていたことが認められるけれども、本雇として雇傭されるか、臨時雇として雇傭されるかは、すべて当事者間で結ばれた労働契約の内容によつて決まることであるところ、原告と被告との間に、原告が右に主張しているような趣旨の約束を含む労働契約がかつて結ばれたことを認めるに足りる証拠はない。そうだとすれば原告だけが一方的に右のように考えていたからといつて、ただちに原告が二カ月の臨時雇傭後に当然に本雇となるものでないことは明らかである。
〔解雇-解雇事由-不正行為〕
 被告の従業員中臨時雇および嘱託について、被告の制定した「臨時雇及び嘱託の就業規程」を補充するものとして適用される被告の就業規則中第五九条には、やむを得ない必要のあること(第七号)が被告の従業員に対する解雇の事由として規定されていることのほかに、原告と被告との間に当初労働契約が結ばれるにあたつて、原告から被告に差入れた「労働契約」と題する書面の中に「メーター器の違反又は不正商行為をした者」、「前歴を偽つて発見された者」、「その他会社が不適当と認めた者」は、即時解雇することができる旨の条項を原告において承諾の上被告と労働契約をする旨が記載されており、原告本人尋問(第一回)の結果によれば、原告は、この記載を読んだうえで右書面を作成して、被告に差入れたことが認められるところからいうときは、被告が前述のような綜合判断にもとづいて臨時雇である原告を解雇する意思表示をしたことには、特段の事情のない限り、違法不当のかどはないものといわなければならない。