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ID番号 04744
事件名 賃金請求事件
いわゆる事件名 北陽電機事件
争点
事案概要  営業職に従事する労働者が、タイムカード記載の労働時間数を前提に時間外労働手当の支払いを請求した事例。
参照法条 労働基準法37条1項
労働基準法32条2項
労働基準法89条1項1号
体系項目 賃金(民事) / 割増賃金 / 支払い義務
労働時間(民事) / 労働時間の概念 / タイムカードと始終業時刻
裁判年月日 1989年4月20日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和60年 (ワ) 610 
昭和63年 (ワ) 2520 
裁判結果 棄却
出典 労働判例539号44頁/労経速報1364号3頁
審級関係
評釈論文 高島良一・経営法曹101号72~96頁1992年10月/末啓一郎・経営法曹97号34~40頁1991年6月/野間賢・季刊労働法153号190~191頁1989年10月
判決理由 〔労働時間-労働時間の概念-タイムカードと始終業時刻〕
〔賃金-割増賃金-支払い義務〕
 (3) 一般に、会社においては従業員の出社・退社時刻と就労開始・終了時刻は峻別され、タイムカードの記載は出社・退社時刻を明らかにするにすぎないため、会社はタイムカードを従業員の遅刻・欠勤等をチェックする趣旨で設置していると考えられる。
 前記認定のとおり、原告らは出社・退社時にタイムカードに時刻を打刻・記載しており、上司のチェックも形式的なものにすぎないのであって、右事実に(人証略)を総合すれば、被告におけるタイムカードも従業員の遅刻・欠勤を知る趣旨で設置されているものであり、従業員の労働時間を算定するために設置されたものではないと認められる。したがって、同カードに打刻・記載された時刻をもって直ちに原告らの就労の始期・終期と認めることはできない。さらに前記認定事実によれば、原告らの業務は外勤が主であり、いわゆる直行・直帰を約四・六日に一日の割合で行っており、旧規則二二条所定の「労働時間を算定し難い場合」に該当するか否かはさておき、そもそも労働時間を算定しにくい業務であると認められるうえ、原告らの直行・直帰の場合のタイムカードの記載方法は統一されていなかったことが認められるから、特に直行・直帰の場合、同カードに打刻・記載された時刻をもって原告らの就労の始期・終期と認めることは、およそできないというべきである。以上によれば、原告らの労働時間はタイムカードに打刻・記載された時刻によって確定できないと判断される。