全 情 報

ID番号 04756
事件名 雇傭関係存在確認等請求事件
いわゆる事件名 博多自動車事件
争点
事案概要  会社の事実上の倒産後、会社の承認のもと「事業管理委員会」の責任者として会社の経営全般をみてきた組合委員長が、会社の主たる債権者たる訴外会社と結託して会社に重大なる損害を与えたとして諭旨解雇され、その効力を争った事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務上の不正行為
裁判年月日 1989年5月17日
裁判所名 福岡地
裁判形式 判決
事件番号 昭和62年 (ワ) 2880 
裁判結果 一部認容
出典 労働判例540号62頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務上の不正行為〕
 (一) 当事者間に争いのない事実並びに(証拠略)及び被告代表者尋問の結果によれば、原告は、被告の事実上の倒産ののちである昭和五〇年ころから被告の財務を担当していたこと、その頃組合から、再建対策委員会を解消して、経営を被告代表取締役Aら経営者に委ねたい旨の提案がなされたが、右Aは態勢が整わないことを理由にこれを断ったこと、B会社は、被告に対し、同五三年八月、「満足できる新たな賃貸借契約締結のための条件」を提示しないときは直ちに右社屋及び敷地の明渡を求める旨の催告をしたが、右条件とは、経営能力のある者への経営権の委任を含む被告社内体制の整備であったこと(なお、〈人証略〉及び被告代表者尋問の結果中には、Cが専ら原告への経営一任を求めていた旨の部分があるが、〈人証略〉に照らし、採用できない。)、被告は、右に対応する措置として、同年九月の被告社員総会において被告代表取締役の代表権行使につき原告の同意を要するものとする旨の決議をしたこと、これを受けて同年一〇月の組合大会決議によって、原告が被告の運営を一任され、これについては被告代表取締役も承諾していたこと、以上の各事実が認められる。
 もとより、労働組合が使用者たる企業の経営を掌握し、あるいは掌握しようとすることは本来の労働組合の活動に必ずしも沿うものであるということはできないが、右認定事実及び前記一2の認定事実によれば、原告は、被告の経営者らの要請ないし承諾と組合の決議に基づき、被告の経営に当っていたのであって、被告が、これをもって懲戒事由とすることができないのは当然である。結局、被告の言わんとするところは、原告が被告の経営につき右のような重大な権限を取得するに際し、私利を図る等の不当な目的を有し、あるいは不当、不正な手段を用いたとして、これが被告就業規則八四条八号(「会社の名義を利用し私利を図る行為があったとき」)または一二号(故意又は重大な過失により・・・・会社に損害を与えたとき」)に該当するという点にあるものとみるほかはないところ、本件においてそのような事実を認めるに足りる的確な証拠はない。