全 情 報

ID番号 04795
事件名 従業員たる地位確認等請求事件
いわゆる事件名 光洋運輸事件
争点
事案概要  業務上の負傷による疾病等のために自宅待機中のトラック運転手が自宅待機期間満了時にトラック運転業務に復帰することができないことを理由として解雇されたのに対して労基法一九条一項の適用により右解雇は違法である等として争った事例。
参照法条 労働基準法19条1項
労働基準法20条1項
体系項目 解雇(民事) / 解雇制限(労基法19条) / 解雇制限と業務上・外
解雇(民事) / 労基法20条違反の解雇の効力
裁判年月日 1989年7月28日
裁判所名 名古屋地
裁判形式 判決
事件番号 昭和59年 (ワ) 2154 
裁判結果 一部認容・棄却(控訴)
出典 労働民例集40巻4・5号463頁/タイムズ750号192頁/労働判例567号64頁
審級関係
評釈論文 小西國友・ジュリスト983号125~128頁1991年7月15日
判決理由 〔解雇-解雇制限(労基法19条)-解雇制限と業務上・外〕
 労働基準法一九条一項は、労働者が業務上負傷した場合、療養のために休業する期間及びその後三〇日間は、事由の如何を問わずに解雇を禁止している。右規定の趣旨は、業務上の負傷による療養のための休業期間という再就職困難期において失職することにより労働者の生活が脅かされることのないよう、再就職の可能性が回復するまでの間、解雇を一般的に禁止して労働者を保護することにあるものと解される。そうすると、症状固定の状態になれば、再就職の困難さという点についてもそれ以上の改善の見込みは失われるのであるから、症状固定時以降は、再就職可能性の回復を期待して解雇を一般的に禁止すべき理由はなくなるものといわなければならない。なるほど症状固定時以降も症状は残存しているのであり、対症療法としての療養が必要な場合はあるけれども、それは、労働能力の低下として評価すれば足り、このような場合には障害補償の対象となることにより救済されるのであって(労働基準法七七条、労災保険法一二条の八等)、業務上の負傷によって労働能力が低下し、再就職が困難になったからといって前記規定により解雇を一般的に禁止すべき理由はない。したがって、業務上負傷した場合においても症状固定時以降は労働基準法一九条一項による解雇制限は適用されないものというべきである。
〔解雇-労基法20条違反の解雇の効力〕
 労働基準法二〇条によれば、使用者が労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも三〇日前にその予告をするか、三〇日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければならないところ、被告が原告に対し、本件解雇に際して同条所定の解雇の予告ないし解雇予告手当の支払をしたとの主張はない(なお、被告が原告に対し本件協定締結の通告をしたことは当事者間に争いがないところであるが、本件協定は、被告と組合との間に締結されたものであり、原告は当事者とはなっていないことは前記認定のとおりであり、しかも、その内容は、原告が昭和五九年四月一五日までにトラック運転業務に従事できないことを条件とするものであって(この事実は当事者間に争いがない。)不確定なものであるから、本件協定の通告をもって同条所定の解雇の予告と解することはできない。)。
 したがって、被告は、本件解雇につき即時解雇に固執する趣旨でない限り、本件解雇の意思表示の日から三〇日を経過した時に解雇の効力が発生するものと解されるところ、本件解雇につき被告が即時解雇に固執する趣旨であることを窺わせる証拠はないから、本件解雇の意思表示の日である昭和五九年四月一六日から三〇日を経過した同年五月一六日の満了をもって本件解雇の効力が発生したものというべきである。