全 情 報

ID番号 04801
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 ビーエムエイ設計事件
争点
事案概要  主たる取引先からの取引解除に伴って行なわれた整理解雇の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法20条1項
体系項目 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の必要性
裁判年月日 1989年12月8日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 平成1年 (ヨ) 2237 
裁判結果 却下
出典 労働判例553号29頁/労経速報1386号22頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-整理解雇-整理解雇の必要性〕
 疎明資料及び審尋の結果によれば、再開発事業に関する契約の解除により申請外会社の売上高は大幅に減少したこと、債務者においては平成元年ころには申請外会社が受注した宇田川地区再開発事業に関する業務の設計部門を担当することが業務の大部分を占めており他には売上を計上できる業務はほとんどなかったこと、申請外会社に対し再開発事業に関する契約の解除がなされたため債務者も宇田川地区再開発事業の設計部門を担当することはできなくなり売上高は大幅に減少したこと、申請外会社の昭和六三年八月一日から平成元年七月三一日までの決算は売上高が八四五五万七〇〇〇円、家賃収入が三八三万五〇七〇円で販売費及び一般管理費が一億五四八七万四二四六円であって営業損失が六六四八万二一七六円、当期未処理損失が六一八一万五二〇七円という多額の赤字となったこと、債務者の昭和六三年八月一日から平成元年七月三一日までの決算は売上高が六〇〇〇万円で販売費及び一般管理費が五九三七万二七七五円であって営業利益が六二万七二二五円、当期未処分利益が三三万七一七一円と若干の黒字とはなっているものの、売上高の六〇〇〇万円は決算書類上の帳尻をあわせるために実際には存在しないにもかかわらず債務者から申請外会社に売上があったものとして計上されているものであって、実質的には多額の赤字決算であることが一応認められる。
 以上によれば、本件解雇予告がなされた平成元年三月当時には、債務者は売上の大部分を占めていた業務を失っており売上の計上を見込める業務もほとんどなく高度の経営危機の状態にあり人員整理を行わなければならない状況であったことが一応認められ、本件解雇予告には「やむをえない事由」があったものと一応認められる。
 また、本件解雇予告当時債務者には債権者、A及びBの三人の従業員がいたことが一応認められることは前記のとおりであるが、疎明資料によれば、Aは容積計算、資料作成の能力が高く、Bは庶務会計事務を一人で担当しており債務者にとって必要不可欠であったために人員整理の対象者として債権者が選ばれたことが一応認められ、解雇対象者の選定に格別不合理な点はみとめられず、その他に本件解雇予告が解雇権の濫用にあたることを窺わせるような疎明資料はない。