全 情 報

ID番号 04806
事件名 不当労働行為救済命令取消請求事件
いわゆる事件名 東北測量事件
争点
事案概要  労働組合結成後一貫して、組合の賃上げ、一時金要求にかかわる団体交渉において、経営実態に関する具体的資料を示すことなく要求を拒否しつづけ、さらに一方的に希望退職等の募集をしたことを不当労働行為とした労委命令の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法20条
労働基準法89条1項3号
労働組合法7条3号
体系項目 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の必要性
解雇(民事) / 整理解雇 / 協議説得義務
裁判年月日 1989年12月19日
裁判所名 青森地
裁判形式 判決
事件番号 昭和61年 (行ウ) 5 
裁判結果 棄却
出典 労働判例557号60頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-整理解雇-整理解雇の必要性〕
 (一) 前示認定の事実によれば、本件は、原告が第一次及び第二次希望退職者の募集及び指名解雇の実施を計画して、その旨補助参加人ら及び従業員に予告し、そのうち第一次希望退職者の募集を実施したものであるということができる。
 これに対し、原告は、希望退職者の募集を実施したにすぎず、指名解雇については、これを予告したのではない旨主張し、(証拠略)及び原告代表者の供述中には、右主張に沿う部分があるが、これらの証拠は、前示認定の各事実に照らし直ちに措信することができず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。
 (二) そして、前示認定の事実、特に、【1】第一次希望退職者の募集ないし昭和五九年一〇月一七日の団体交渉における第二次希望退職者の募集及び指名解雇実施の予告が、原告による団体交渉拒否の不当労働行為と同時期にこれと平行してなされている事実、【2】昭和五九年一〇月一七日の団体交渉における原告代表者のいわゆる組合敵視の発言、【3】原告が団体交渉の場で人員削減の必要性についてなんら実質的な説明をしなかった事実、【4】前示指名解雇の基準中、同第六、第七、第八及び第一〇項はもっぱら補助参加人らの組合活動を対象としたものと認められることなどによれば、右指名解雇実施の予告は、経営不振に藉口して、補助参加人ら組合の壊滅、弱体化を企図してなされたもので、第一次希望退職者の募集及び第二次希望退職者募集実施の予告もこれと一体として、同様の意図のもとに実施されたものとみるのが相当である。
 したがって、右指名解雇及び希望退職者募集の実施の予告並びに希望退職者の募集は、労働組合法七条三号に違反する支配介入の不当労働行為であって許されないものといわなければならない。
〔解雇-整理解雇-協議説得義務〕
 したがって、被告は、その裁量権の範囲内で、予めこれを禁止するため必要な救済命令を発することができるところ、人員削減の必要性が存在するか否か等については、労使の自主的な交渉によって協議されることが望ましいのであるから、原告と補助参加人らとの間の協議を希望退職者募集及び指名解雇実施の条件とした本件命令主文第二項は、相当な措置であって、被告の裁量権を濫用ないし逸脱したものとはいえず、また、原告の固有の権能を不当に制約するものでもないといわなければならない。
 したがって、これが違法な包括的一般的救済命令であるとの原告の主張には理由がない。
 六 請求原因2(三)について
 以上のとおり、被告の本件命令主文第一、第二項には、いずれも違法な点はないから、本件命令主文第三項に関する原告の主張は理由がなく、第三項もまた相当として是認することができる。