全 情 報

ID番号 04837
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 大和交通事件
争点
事案概要  争議妥結に際し組合役員から争議あっせん者に託された退職届を使用者が受理したことにより、合意解約が成立したとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法628条
体系項目 退職 / 合意解約
退職 / 退職願 / 第三者による退職願
裁判年月日 1961年6月13日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和33年 (ヨ) 4086 
裁判結果 却下
出典 労働民例集12巻3号499頁/時報279号27頁
審級関係
評釈論文 後藤清・法律時報34巻4号90頁
判決理由 〔退職-合意解約〕
〔退職-退職願-第三者による退職願〕
 ところで、さきに認定のように申請人等は協定条件の諾否が討議された組合大会においてその受諾決議のあつた直後その場で退職届を作成して正式の協定妥結に赴く申請人X1に託したものであり、しかも右大会において協定条件特に申請人等による退職届の提出に関する条項について上述のような趣旨のものとして討議がなされ、申請人等も逐一その経過を承知、討議していたものである以上申請人等が右協定の趣旨を体して会社宛の退職届を提出したことが申請人等主張のように会社に対する見せ証文の意味しかなかつたもので退職の意思を表示するものでなかつたとか、退職の真意に基くものでなかつたものであるとか、いうを得ないことは明らかである。
 従つて申請人等のこの点の主張はすべて理由がなく、申請人等が退職届の提出を以てなした退職の申込は会社において前記協定妥結に際し右退職届提出の事実を確認し右申込を了知すると同時に会社に対して申込たる効力を生じたものといわなければならない。
 四、しかして前出乙第三十一号証、同第三十九号証、証人Aの証言により成立の真正を認める乙第三十八号証竝びに右証言、被申請会社代表者Y本人尋問の結果により成立の真正を認める乙第三十七号証竝びに右本人尋問の結果によれば国自協のB会長は労使間に成立した協定が前記のような内容であつて会社としても一応名分の建つところのものであつたに拘らずさきに争議が会社の全面的敗北に帰した旨の記事竝びに談話が同年八月九日発行の朝刊紙上に掲載されたので痛く憤慨し、もはや申請人等の退職申込につき特別の考慮を払う余地はないとし翌十日会社のY社長に対し直ちに申請人等の退職を実現すべき旨を通告したこと、そこで会社のY社長は右同日中あるいはB会長ともども、あるいは単独で申請人X1、同X2に対し且つ同人等を通じてその余の申請人等に対し、さきになされた退職申込を承諾する旨を申渡したことが一応認められ右認定に牴触する甲第八号証の記載部分、申請人X1(但し第一、二回とも)、同X2の各供述部分は、にわかに採用し難く他に右認定動かすに足る疏明はない。