全 情 報

ID番号 04868
事件名 賃金請求事件
いわゆる事件名 カメラのマルタニ事件
争点
事案概要  会社の当期利益が赤字になったことにともなう従業員に対する賃金引下げにつき、会社が従業員の合意なく一方的にはなしえないとして未払賃金の支払いが命ぜられた事例。
 中小企業退職金共済制度の場合、退職した従業員は直接同事業団に退職金を請求する権利を有するのであり、雇傭主に対しては同退職金を請求する権利はないとされた事例。
参照法条 中小企業退職金共済法5条
労働基準法24条
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権と考課査定・昇給昇格・降格・賃金の減額
賃金(民事) / 退職金 / 共済制度と退職金請求権
32918
裁判年月日 1990年2月14日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和63年 (ワ) 11694 
裁判結果 一部認容,一部棄却
出典 労経速報1387号15頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-賃金請求権と考課査定・昇給昇格・賃金の減額〕
 (書証略)によれば、被告は第七期(昭和六〇年一二月一日から同六一年一一月三〇日まで)以降、当期損益が赤字となったことが認められるが、使用者は当期損益が赤字となったからといって一方的に従業員の賃金を引き下げることはできないと解されるところ、被告は、【1】賃上げのときに原告との間において赤字のときは給料を従前の額に引き下げる旨合意した、【2】賃下げのときに原告の同意を得た旨各主張するが(抗弁1(一)及び(二))、いずれも認めるに足る証拠はない。
 したがって、原告の給料は昭和六一年八月分以降も月額四〇万円であるから、被告は原告に対し、未払給料として同月から昭和六二年九月分まで毎月各一〇万円、合計一四〇万円を支払う義務を有する。
〔賃金-退職金-共済制度と退職金請求権〕
 2 中小企業退職金共済制度の場合、退職した従業員は直接同事業団に退職金を請求する権利を有するものであり、雇傭主に対しては退職金を請求する権利はないから、被告が右制度に加入しているからといって、原告が被告に対し退職金請求権を有するとはいえない。
 3 原告は、被告には退職金支給の慣行が存する旨主張するが、被告を退職した従業員が退職金を受領した例があることは認められるものの、証拠上同人に退職金を支払ったのは被告なのか退職金共済事業団なのか明らかではなく、退職金支給の慣行の存在は本件全証拠からしても認めるに足りないから、原告の退職金請求は失当である。