全 情 報

ID番号 04871
事件名 不当労働行為救済命令取消請求事件
いわゆる事件名 オリエンタルモーター事件
争点
事案概要  三六協定の締結に際し、会社が組合員に組合加入の有無を照会したことにつき、組合が組合員名簿の提出を拒否したこと等により、不当労働行為には該当しないとされた事例。
参照法条 労働基準法36条
体系項目 労働時間(民事) / 三六協定 / 締結当事者
裁判年月日 1990年2月21日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和62年 (行ウ) 108 
裁判結果 一部認容・棄却控訴
出典 労働民例集41巻1号16頁/時報1368号136頁/タイムズ755号164頁/労経速報1388号3頁/労働判例559号54頁
審級関係 控訴審/東京高/平 2.11.21/平成2年(行コ)26号
評釈論文
判決理由 〔労働時間-三六協定-締結当事者〕
 前認定によれば、原告は、補助参加人から自らが従業員の過半数を組織する労働組合であるとして三六協定を締結するよう要求されていた一方、当時の三六協定の適法性に疑義があるとする松戸労基署の指示に基づき、残業を中止せざるを得なくなり、早急に新たな三六協定を締結する必要に迫られていた。そこで、原告は、補助参加人が三六協定の締結当事者としての適格性を有しているか否かを確かめようとして、補助参加人に組合員名簿の提出を求めたが、これを拒否されたため、本件照会票を配布して組合加入状況を調査したものである。本件命令は、原告が本件照会票を配付したのは、三六協定の締結に藉口して組合員の氏名を知ることを目的として行ったものであるとするが、右事実関係のもとでは、原告が本件照会票を配付したことには相当な理由があったものといわざるを得ず、原告の目的が右のようなところにあったものとは認め難い。確かに本件命令のいうように、組合員の氏名を明らかにする必要はなかったのであるから、原告としては補助参加人に対してその組織率を明らかにするよう求めれば足りたとも考えられないでもないが、ことは三六協定の締結当事者の要件を満たすか否かという問題で、しかも労基署から右協定を締結するよう指示されていたのであるから、正確を期するため氏名を明らかにしたうえでの回答を求めたとしても、そのこと自体非難に値するものということはできない。まして補助参加人は、自ら過半数を組織するとして三六協定の締結を求めたのであるから、組合員名簿の提出を拒否するのであれば、別途組織率を明らかにする方法を提案してしかるべきであった。ところが、本件において、補助参加人からこの点につき積極的に協力しようとした事実は、全証拠によっても認めることができない。そうすると、原告が本件照会票の配付という方法によったことも、他に適切な方法が検討されていなかった以上、やむを得なかったものといえよう。右によれば、原告が補助参加人に対して組織率を明らかにするよう求めた事実を認めるに足りる証拠がないからといって、本件照会票の配付の目的が組合員の氏名を知ることにあったと断ずることはできず、結局右行為が不当労働行為に当たると認められるような事情は、本件において認めることができないことに帰する。
 したがって、本件命令中、右照会票の配付を組合の運営に対する支配介入に該当する不当労働行為であるとして、原告に対しこのような方法で補助参加人の運営に介入することを禁止するとともに、ポストノーティスを命じた部分は違法であって、取り消されるべきである。