全 情 報

ID番号 04881
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 林兼造船事件
争点
事案概要  職場秩序を乱した者、職制を乱した者、勤務不良の者である等の理由により解雇された者が、右解雇を正当な争議行為を理由とする不当労働行為であるとして地位保全の仮処分を申請した事例。
参照法条 労働基準法20条1項
労働組合法7条1号
体系項目 解雇(民事) / 解雇の承認・失効
解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度
裁判年月日 1950年4月28日
裁判所名 山口地下関支
裁判形式 判決
事件番号 昭和25年 (ヨ) 3 
裁判結果 一部認容・却下
出典 労働民例集1巻2号216頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇の承認・失効〕
 成立に争がない乙第三号証の記載によれば申請人等の中Aは昭和二十五年三月七日、Bは同年三月十三日、Cは昭和二十四年一月二十六日被申請人からそれぞれ解雇手当金並退職手当金を受領していることを推測せられ他に右推測を覆すに足る疏明はない。そうすると、A、B、Cはいずれも右解雇を承諾したものといわなければならない。従て同人等は右解雇の無効を理由として仮の地位の保全処分を請求する権利はない。〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕
 成立に争のない甲第十一号証の記載によつて推測せられる其の他の申請人等の解雇の理由は職場秩序を乱したもの、職制を乱したもの、勤務不良のものとなつていること、成立に争のない乙第十号証の記載によつて推測せられる、其の他の申請人等の解雇理由は被申請人制定の就業規則第六十五条第十三号並其の適用基準に該当するものとなしているが具体的な事実の指示がないこと、証人Dの証言により推測せられる前述のE労働組合の組合員にも右解雇理由に該当する労働者が多多あるが其の組合員は一名も解雇せられなかつたこと、当事者間争がない右解雇は分会と被申請人との前述の争議中に通告発表せられたことを綜合すると、其の他の申請人等の右解雇は同申請人等が分会の組合員であること及び分会のために前述の争議行為をしたことを理由としてなされたものと推測せられる。乙号各証の記載をもつては右推測を覆すことはできず、証人F、G、H、I、J、K、L、M、Nの証言中右推測に反する部分は前述の疏明と対照して措信し難く、他に右推測を覆すに足る疏明はない。
 その上、前述のような原因経緯によれば、其の他の申請人等のなした前述の争議行為は正当なものといわなければならない。
 そうすると、右解雇は労働組合法第七条第一号前段に違反して無効であつて其の他の申請人等は依然として右解雇の通知を受けた日の前日である昭和二十四年十二月二十八日現在の条件を受ける被申請人の雇傭員たる地位を保有しているといわなければならない。