全 情 報

ID番号 04897
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 理研発条鋼業事件
争点
事案概要  懲戒解雇された労働者が、右解雇につき「懲戒は懲戒委員会の議を経て組合の同意を得て行う」旨の就業規則に違反して無効であるとして地位保全の仮処分を申請した事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒手続
裁判年月日 1950年9月7日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 昭和25年 (ヨ) 2826 
裁判結果 認容
出典 労働民例集1巻5号795頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒手続〕
二、被申請人会社が昭和二十三年三月一日から実施している就業規則は、現にその効力を有するものと認められるが、(当庁昭和二十五年(ヨ)第二、一七三号決定参照)その就業規則には、
 『第七十六条、懲戒は会社組合同数の懲戒委員会の議を経て組合の同意を得て之を行う。従業員には懲戒委員会において辯明の機会が与えられる。』
 との規定がある。
三、しかるに、本件解雇については、懲戒委員会が開かれていないから本件の解雇は、この点において、すでに、右第七十六条に違反している。
四、この点に関し、被申請人会社は、本件解雇につき、会社は申請人等の所属するA株式会社従業員組合の同意を求めたところ、右組合は組合大会を開いた結果、(この大会において、申請人等は解雇理由を告げられ、弁明の機会を与えられた。)右解雇を承認し、且つ懲戒委員会を省略する旨の回答があつたので八月十日附を以て、本件解雇を行つたものであると主張する。
 しかしながら、右組合大会において申請人等が解雇理由を告げられ、弁明の機会を与えられたということも明確ではないし、又右組合大会が、その解雇理由について十分な検討を加えたこともはつきりしていない。
 そもそも、懲戒解雇は、経営秩序維持のため経営者のもつ経営指揮権の発動としてなされるものであるから、そのイニシアテイヴをとる会社側のいないところで解雇理由を聞かされ、弁明の機会を与えられたとしても、それは全く無意味なことであるといわなければならない。而して懲戒委員会は、労使双方の委員を以て構成せられ、その面前で弁明したところを労使の異る角度から検討協議して解雇の適正を図らうとするものであるから、それは、申請人等にとつて重大な利害をもつ制度であり、従つて、申請人等の意に反して、これを省略することはできない、といわなければならない。すなわち、本件解雇は、前記組合の承認があつたからといつて適法となるものではない。