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ID番号 04912
事件名 不当労働行為救済命令取消請求事件
いわゆる事件名 銭高組名古屋支店事件
争点
事案概要  賃上げ、一時金等についての団交のもち方に組合間差別があったとして救済を命じた労働委員会の命令の取消しが争われた事例。
参照法条 労働基準法11条
労働基準法3章
体系項目 賃金(民事) / 賞与・ボーナス・一時金 / 賞与請求権
裁判年月日 1990年5月31日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和60年 (行ウ) 114 
裁判結果 一部認容
出典 時報1367号115頁/労働判例564号47頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-賞与・ボーナス・一時金-賞与請求権〕
 賃金、一時金のような基本的な労働条件については、会社の全従業員に同一の基準が適用されて決定されることが、実際上は望ましいことである。そして、その決定が団体交渉を通じて行われる場合には、その過程では、会社の業績、組合の要求の強さ、ストライキ等の争議行為の行われる可能性、それによって会社の業務に及ぼす影響及び程度、賃金カットによって組合ないし組合員が受ける影響の程度などの諸々の要素が考慮される。したがって、現実の労使関係においては、圧倒的多数の従業員によって組織されている組合とごく少数の従業員によって組織されている組合とが存する場合に、多数組合の要求及びこれとの団体交渉をより重視せざるを得ないことがあることは、会社主張のとおりである。
 しかし、(証拠略)によると、会社は、名古屋支部及びA労働組合のいずれとも、一回の団体交渉のみで、賃上げや一時金について妥結した事実はないことが認められるから、最終的に妥結をする段階においては、A労働組合との団体交渉をある程度は優先せざるを得ないとしても、第一回団体交渉の開催については、右事情は妥当しない。すなわち、第一回団体交渉においては、まず会社の回答について説明を行い、これについて名古屋支部から質問を受けるだけでも、会社の回答に対する理解を求めるとともに、要求のポイントやその強さを知ることができ、場合によっては第二次回答を示すことの要否を決める手がかりが得られるのである。右のような説明を行い、質問を受けることは、A労働組合との団体交渉の経過いかんにかかわらずできることであるし、当初から数次の上積み回答が見込まれるような場合には、A労働組合に対するより先に名古屋支部に対して第二次回答をしたからといって、A労働組合との団体交渉に支障が生ずるとは考えられない。現に、昭和五〇年の夏期一時金についての名古屋支部との第一回団体交渉は、A労働組合と同日に行われているが、これによって不都合が生じたことを窺わせる証拠はない。更に、名古屋支部は、名古屋支店が独自にその賃金、一時金等を決定し得る傭員をも組合員とし、これに対する一時金もその要求事項に含まれていたのであるから、これについてはA労働組合との団体交渉の経過を勘案せずに団体交渉ができたことは明らかである。
 しかるに、会社は、前認定のとおり、名古屋支部との団体交渉については、一貫して、A労働組合との団体交渉期日を基準にしてこれよりも遅い期日を設定し、A労働組合に対してよりも短い時間に限定し、A労働組合に対する回答以上の回答を示さないという方針のもとに、すなわち、譲歩意思を持たずに団体交渉に臨んでいたのであるから、A労働組合に比べて不当に名古屋支部を軽視し、誠実に団体交渉を行わないものとして、労働組合法七条二号の不当労働行為に該当することは明らかであり、昭和五三年度年末一時金についての団体交渉が遅れたのも、会社のこのような態度の表れというべきである。