全 情 報

ID番号 04929
事件名 雇用関係存在確認等請求事件
いわゆる事件名 国鉄事件
争点
事案概要  市・町村議会に当選した国鉄職員が国鉄法にもとづく兼職承継を得ていないとして、当選告知日に国鉄職員の地位を失うとされた事例。
参照法条 労働基準法7条
日本国有鉄道法26条2項
公職選挙法103条1項
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 公民権行使 / 公民権行使と休職・解雇
退職 / 失職
裁判年月日 1989年10月11日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和58年 (ワ) 1145 
昭和60年 (ワ) 3444 
裁判結果 棄却
出典 タイムズ729号147頁/労働判例549号16頁/労経速報1375号19頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔退職-失職〕
 しかし、公選法一〇三条一項が前記のような規定をしているのは、当選人が議員との兼職を禁止されている職にあることが理由となって当選を失うことがないようにするため、換言すれば、当該選挙における投票の結果を尊重しこれを維持するためであって、その趣旨は、国鉄職員が当選人となった場合にも当然妥当するものといってよいし、また、国鉄法二六条二項の解釈としても、当選の告知前に総裁の承認を得ておく必要があることは、後述するとおりであるから、これらを勘案すると、国鉄職員が市町村議会の議員に当選したときは、当選の告知前に総裁の承認を得ていない限り、公選法一〇三条一項の規定に基づき、当選の告知の日に国鉄職員の地位を失うと解するのが相当である。
〔労基法の基本原則-公民権行使-公民権行使と休職・解雇〕
 原告らは、国鉄法二六条二項を労基法七条と抵触しないように解釈するためには、右のように解釈すべきであると主張する。
 しかしながら、労基法七条は、労働者が公民権を行使するため必要な時間については、使用者に職務専念義務の免除を命じているに留まるのであって、公民権行使の結果生ずる業務阻害を理由にして労働者を通常解雇し、あるいは失職させることまでを禁止するものではない。しかも、国鉄法二六条二項は、労基法七条の存在を前提とした上で、基幹的交通機関である国鉄の業務の公共性に鑑み、市町村議会の議員との兼職は、一般的に業務阻害の恐れがあるものとして、総裁の承認を得た場合のほかには認めない旨を定めたものと解されるから、これを字義どおり解釈したからといって、なんら労基法七条に抵触するものではないというべきである。