全 情 報

ID番号 04941
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 杉乃井ホテル事件
争点
事案概要  ホテル内の「クラブ」に勤務するホステスに対する「クラブ」廃止を理由とする配転命令拒否にもとづく解雇(雇止め)が無効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 業務命令違反
裁判年月日 1989年11月1日
裁判所名 大分地
裁判形式 決定
事件番号 平成1年 (ヨ) 180 
裁判結果 認容
出典 労経速報1375号3頁/労働判例550号6頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-業務命令違反〕
 右認定事実によれば、本件雇止めは、債務者が平成元年六月四日に決定した「クラブA」の閉鎖に伴う一連の流れの終着点において生起したものとして捉えるべきものと解するのが相当であるところ、右閉鎖決定が、クラブ閉鎖後における営業形態の変更や債権者らホステスに対する配転等の具体的な合理化案について何ら解決を見ないままなされたものであり、右解決を見なかったことについて組合や債権者らに責に帰すべき特段の事情も見いだし得ない以上、債務者は、前示昭和六三年一二月二九日付協定に違反して右閉鎖決定をなしたものといわざるを得ない。もっとも、右協定によれば、同クラブの閉鎖は、右具体的合理化案の前提事項として組合との間に合意が成立していたといえなくもないが、それとてもやはり右具体的合理化案の決定手続及びその内容との関連において認められるべきものであると解するのが相当であるから、右閉鎖自体についての合意の成立のみを抽出して、右決定を正当化することはできない。
 そうすれば、これに続く本件業務命令も、右具体的合理化案として決定された新営業形態や配置転換に基づくものではなく、単にその閉鎖を決定してこれを実施し、全ての債権者らホステスを強引に料飲課へ所属させようとしたに過ぎないものであるというべきであるから、右昭和六三年一二月二九日付協定に違反したものというべきである。そうすると、それに続く自主営業中止並びに本件業務命令違反を理由とする出勤停止及び自宅待機の各処分、ひいては自宅待機中の説明会への欠席をもって、債権者らに就労の意思なしとしてなした本件雇止めは、いずれも著しく不合理であり、社会通念上相当として是認できないというべきであるから、本件雇止めは、解雇権の濫用として無効であるといわざるを得ない。