全 情 報

ID番号 04946
事件名 退職金等請求事件
いわゆる事件名 松本製作所事件
争点
事案概要  時間外労働および休日労働に対する未払い賃金請求が一部認容された事例。
 退職金支払いに関する合意がなされていなかったとして、退職金請求が棄却された事例。
参照法条 労働基準法37条
労働基準法89条1項3号の2
体系項目 賃金(民事) / 割増賃金 / 支払い義務
賃金(民事) / 退職金 / 退職金請求権および支給規程の解釈・計算
裁判年月日 1989年11月21日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和62年 (ワ) 10490 
裁判結果 一部認容棄却
出典 労働判例552号64頁/労経速報1384号7頁
審級関係
評釈論文 末啓一郎・経営法曹97号34~40頁1991年6月
判決理由 〔賃金-退職金-退職金請求権および支給規程の解釈・計算〕
 二 退職金請求(請求原因2)について
 1 原告(但し一部)、被告代表者各本人尋問の結果によれば、被告においては従前退職金制度はなく、退職した従業員に対し退職金を支給していなかったこと、原告の入社時において退職金の話はされなかったこと、被告は昭和六一年一二月退職金制度を新設し、中小企業退職金共済事業団に加入し、原告に関しても同時期に同事業団に加入したこと、加入後の期間不足のため原告には右制度による退職金は支給されなかったこと、原告の勤務成績は普通であり、被告に対し特別の功労はなかったことが認められ、この認定に反する原告本人尋問の結果は採用しない。
 2 被告代表者本人尋問の結果によれば、原告は退職の数日前被告に対し退職金を請求したことは認められるが、請求原因2(一)、(二)の主張(被告代表者が退職金を支払う旨約したこと等)に副う原告本人尋問の結果は、右1認定の事実及び反対趣旨の被告代表者本人尋問の結果に照らし採用できず、被告が原告に二〇〇万円の退職金を支払う旨約したと認めることはできない。
〔賃金-割増賃金-支払い義務〕
 2(一) 原告は、請求原因4及び5において、昭和五七年二月一日以降退職時までの間、午前八時から午後五時まで労働したことに対する賃金について未払分があるとしてその請求をしているものと解されるところ、本件雇用契約において、昭和五七年二月一日以降始業時刻は午前八時、終業時刻は午後五時、休憩時間は午後零時から零時四五分までと午後三時から三時一〇分までで、一日の所定労働時間は八時間五分との約定であったことは前認定のとおりである。法定労働時間は一日について八時間であり、労働基準法一三条により、原告が労働義務を負う時間は八時間に減縮されるから、原告は、毎勤務日において午後五時までの間に各五分間時間外労働をしたことになる。右一三条の規定は、労働基準法に定める基準に達しない部分を無効にするものであり、約定賃金には、それが時間給であることが明白である場合を除き、影響を及ぼさないと解されるから、右各五分間の労働に対しては賃金が支払われていないことになる。