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ID番号 04969
事件名 労働者災害補償法に基く決定取消請求上告事件
いわゆる事件名 日立労働基準監督署長事件
争点
事案概要  労働保険審査会に対する審査の請求がその期間経過後にされた不適法なものであったとして却下された場合に、労基署が労災保険法一九条によってした決定および右決定について保険審査官が同法三五条によってした審査決定の取消を求める訴が提起された事例。
参照法条 労働者災害補償保険法35条
体系項目 労災補償・労災保険 / 審査請求・行政訴訟 / 審査請求との関係、国家賠償法
裁判年月日 1955年1月28日
裁判所名 最高二小
裁判形式 判決
事件番号 昭和28年 (オ) 251 
裁判結果 破棄・却下
出典 民集9巻1号60頁/訟務月報1巻1号71頁/裁判集民17号197頁
審級関係 控訴審/04960/東京高/昭28. 2.24/昭和26年(ネ)2022号
評釈論文 民商法雑誌32巻6号818頁
判決理由 〔労災補償・労災保険-審査請求・行政訴訟-審査請求との関係、国家賠償法〕
 保険給付に関する決定に対する訴を提起するについては、保険審査会の審査決定を経なければならないことは、労働者災害補償保険法三五条の規定上明白であるが、原判決は、右のような却下の審査決定でも同条の審査決定を経た場合に該当するものとし、本訴を適法なものとして上告人等の決定の当否について審理し、その決定を違法として取り消したのである。しかし、このような却下の審査決定を経たからといつて、本訴が同条にいう審査決定を経た適法な訴ということは倒底できない。けだし、審査請求の期間を経過した後は、宥恕すべき事由の認められる場合のほか、決定に不服のある者ももはや原決定の当否について争うことは許されないものと解すべく、審査会が請求を期間経過後の不適法な請求として却下した場合においては、その却下決定が違法でない以上訴訟をもつてしても審査の対象たる原決定の当否を争うことはゆるされないものと解すべきであるからである。本件においては、被上告人は右審査会の決定の適否については争わず、また審査決定を違法とすべき何等の事由もないのであるから、かかる審査決定を経て提起された本件訴は不適法な訴といわなければならない。若し原判決のように解するならば、原決定後数ケ年を経過した後においても審査請求をし(この場合、審査会は宥恕すべき事由を認めない以上却下するよりほかはないのであるが)さらに訴をもつて原決定の当否までも争い得ることになり、審査請求について期間を限つた法律の趣旨は全く没却されることとなりその不合理であることは極めて明白である。