全 情 報

ID番号 04970
事件名 労災保険決定取消請求事件
いわゆる事件名 丸菱商会・長崎労災保険審査会事件
争点
事案概要  塗装工が就業中に足場の不安定から墜落死亡した事故につき事業主(保険加入者)に重過失があったとして給付制限の処分がなされたことにつきその取消が争われた事例。
参照法条 労働者災害補償保険法19条
体系項目 労災補償・労災保険 / 審査請求・行政訴訟 / 行政処分の存否、義務づけ訴訟等
裁判年月日 1955年3月4日
裁判所名 長崎地
裁判形式 判決
事件番号 昭和28年 (行) 4 
裁判結果 取消・却下
出典 労働民例集6巻3号339頁/訟務月報1巻2号67頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-審査請求・行政訴訟-行政処分の存否、義務づけ訴訟等〕
 職権をもつて原告の保険金給付を求める訴の適否につき按ずるに労働者の災害に伴つて支給される保険給付額の決定がいわゆる行政処分であることは労働者災害補償保険法第十七条第十八条第十九条等の規定に徴して疑のないところであり、事故の発生につき単に保険加入者である事業主に故意又は重大過失がない場合でも、労働者自身に故意又は重過失があるとき、保険加入者が保険料の納付を怠つたとき、保険料の算定又は保険給付の基礎である重要な事項について不実の告知があつたときには、政府は保険給付の一部又は全部を支給しないことができることに定められているのであるから、従つて保険加入者である事業主に故意又は重過失がないからといつて直に保険給付額が算定されるわけではなく、保険給付制限事由の存否及び保険給付金額の決定は矢張り行政庁たる被告の行政処分にまつべきことは当然である。
 そうすれば裁判所が行政庁に代つて保険給付制限事由の存否及び保険給付金額を決定し、行政庁に対して給付を命ずるということは、三権分立の立前に反して自ら行政権の行使に介入する結果となり、到底許されないことゝ認めるの外はない。