全 情 報

ID番号 04971
事件名 労災保険審査決定取消請求事件
いわゆる事件名 福島労災保険審査会事件
争点
事案概要  脱臼による拇指の運動障害を就業中の転倒による打撲に基づくもので業務上の負傷であるとして保険給付を請求した事例。
参照法条 労働基準法77条
労働者災害補償保険法12条1項
体系項目 労災補償・労災保険 / 補償内容・保険給付 / 障害補償(給付)
労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 災害性の疾病
裁判年月日 1955年3月22日
裁判所名 福島地
裁判形式 判決
事件番号 昭和28年 (行) 11 
裁判結果 棄却
出典 労働民例集6巻3号346頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-災害性の疾病〕
〔労災補償・労災保険-補償内容・保険給付-障害補償(給付)〕
 原告は、左拇指に前記打撲傷を受けると同時にその指の掌指関節が脱臼したと主張するが、右事実を認めしめるに足りる証拠は一もなく却て乙第一号証の一、第二号証を総合すると、原告が前記打撲傷を受けた日の翌日である昭和二七年八月二日には原告の左拇指掌指関節に脱臼及び骨折がなく、単に左拇指打撲傷を負つていたに過ぎないことが認められるので、原告の右主張は到底これを採用することができない。
 次に原告は前記打撲傷につきその治療の不適正のため左拇指に用を廃する程度の運動障害が残つたかのように主張するから、この点を判断するに、原告の右運動障害は、原告の左拇指掌指関節の脱臼に起因するものであること、しかし、右脱臼が原告の前記打撲傷を受けた日の翌日の初診時にはなかつたことはさきに認定したとおりである。よつて右の脱臼と原告の前記打撲傷の治療方法との間に因果関係があるかどうかを検討すると、原告の前記打撲傷の担当医A医師は、右の打撲傷に対しゼノール湿布及び鉛糖水湿布の処置をして患部の腫脹消退を計り、昭和二七年九月一日からゼノール湿布を施す傍らマツサージ療法を行つた結果、腫脹も著しく軽減したが同月一六日ころから腫脹が増大したので、マツサージ療法を中止しその後の症状は固定したので、同月一〇月三一日に治ゆ?ノ、の取扱をしたことは冒頭掲記(二)のとおりである。更に乙第一号証の二、乙第二号証、証人Bの証言を総合すると、原告の左拇指掌指関節の脱臼は、昭和二八年二月一〇日撮影した原告の左手部レントゲン写真によつて初めて発見されたのであるが、右脱臼は、原告の前記打撲傷に対する治療方法すなわち、マツサージ、湿布、繃帯などによつては前記治ゆ?ノ、の経過からみて起り得るものではなく、その原因は不明であるが、右治療以外の何らかの事故にもとずくものであることが明らかであるから、前記治療方法と右脱臼との間に因果関係があるものとは認めがたく、原告の右の主張もまたこれを採用することができない。
 以上のとおりであつて、原告の前記運動障害は、到底業務上の事由によつて生じたものであると認めることはできない。