全 情 報

ID番号 05035
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 小糸製作所事件
争点
事案概要  争議中に会社の製品や器具をその意に反して持ち出そうとしたり、会社の課長等の入門を阻止するなどの行為を理由としてなされた組合員たる従業員の懲戒解雇の効力が争われた事例。
参照法条 労働組合法7条1号
労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動
裁判年月日 1958年11月24日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 昭和31年 (ヨ) 4096 
裁判結果 却下
出典 労働民例集9巻6号884頁/時報173号26頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-違法争議行為・組合活動〕
 3 会社の製品や器具をその意に反して持ち去り、又はその返還要求を拒否してこれを留置する如き争議行為は、到底正当な争議行為とは考えられず、従つてかかる行為を企図し又はこれを実行した申請人等の行為は就業規則第六六条第四号に定める解雇の事由である「不正に会社の物品を持ち出し又は持ち出そうとしたとき」に該当するものというべきである。
 なお前認定(2)の申請人Aの行動は、最早組合側の説得を聞く意思のない非組合員である会社の課長等がその業務を遂行しようとするのを知りながら、これを実力で阻止するため全組合員を集合させ、そのため右課長等が入門させようとする自動車を一、二米後方に押しもどす結果が生じたのであるから、かかる結果は同申請人の企図するところと認めるのが相当であつて、かかる同申請人の行為は就業規則第六五条第三号に定める解雇事由である「正常な業務を妨害したとき」に該当する。
 4 疎明によれば、会社は昭和三一年一一月一二日内容証明郵便で申請人等に対しその解雇理由を違法な争議行為の計画、実行、会社業務の妨害等に要約して告知していることが認められるから(なお、別に口頭で告知している疎明はあるが、その告知の内容については疎明がない。)、右の要約は前記1、2、3、の諸事情を含むものと考えられ、この程度の解雇理由の表示は、やや漠然たる憾みはあるが、解雇を無効ならしめる事情とは考えられない。
 そして、申請人等に前記の就業規則に定める解雇事由に該当する事実があり、かつ、その行為の程度から見て解雇をすることが不相当とも認められないし、更に争議終結の際の会社、組合間の協定書にも組合の争議行為に行過ぎのあつたことを前提として、違法な争議行為に対する責任を追及する条項の存する点から見ても、申請人等に対する解雇を、懲戒をする必要もないのになされた専恣な懲戒権の行使として乱用であるとは認められないところである。