全 情 報

ID番号 05059
事件名 休業補償費不支給処分取消請求事件
いわゆる事件名 亀戸労基署長(石川島播磨重工業)事件
争点
事案概要  会社構内でタイムカードの打刻をめぐる労使間の意見の食違いから会社の勤労課員および警備員からタイムカードの打刻を阻止され、会社側の制止を排除しようとしてその際に生じた負傷が業務上の負傷に当るか否かが争われた事例。
参照法条 労働基準法76条
労働者災害補償保険法12条の8
労働者災害補償保険法14条
体系項目 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 暴行・傷害・殺害
裁判年月日 1982年7月14日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和54年 (行ウ) 56 
裁判結果 棄却
出典 労働民例集33巻4号663頁/労経速報1131号8頁/労働判例393号8頁
審級関係 控訴審/東京高/昭59. 6.28/昭和57年(行コ)229号
評釈論文 井上浩・労働判例393号4頁/楢崎二郎・ジュリスト810号113頁
判決理由 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-暴行・傷害・殺害〕
 本件傷害は、原告が分会の指示に従い会社に対して抗議の意思を表明するため、会社側の制止するタイムカードの打刻を強行しようとして生じたものである。ところで、タイムカードの打刻は、会社がその廃止を宣言し、始終業の時間管理について他の方法を提供しているような場合には、会社側の制止を排除し暴行を働いてまでなすべきものではなく、その意味で、会社側の制止を排除し、暴行を働く際に生じた本件災害は、タイムカードの打刻に内在しこれに通常伴うような危険に基づいて生じたものということはできず、むしろ、原告が会社側の制止するタイムカードの打刻を強行しようとして自ら作り出した危険に基づいて生じたものといわなければならない。そして、このように、労働者が逸脱行為をして自ら作り出した危険に基づいて生じた災害は、たとえ業務の遂行を目的とする行為の際に生じたものであるとしても、当該業務との間になんら相当因果関係はないというべきであるから、原告の主張するようにタイムカード制が有効に廃止されたものであるかどうかについて判断するまでもなく、本件災害には業務起因性がないものといわなければならない。
 そうすると、本件災害が業務に起因するものではないことを前提としてされた被告の本件処分は適法であって、同処分には原告の主張するような瑕疵はないというべきである。