全 情 報

ID番号 05118
事件名 労働者災害補償処分取消請求事件
いわゆる事件名 大野労基署長事件
争点
事案概要  旋盤工が魚を刺すヤスを制作中に砥石車の破裂により受けた災害が業務上に当るか否かが争われた事例。
参照法条 労働者災害補償保険法12条1項
労働基準法75条
体系項目 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 通勤途上その他の事由
裁判年月日 1966年9月6日
裁判所名 福井地
裁判形式 判決
事件番号 昭和38年 (行) 7 
裁判結果 棄却
出典 訟務月報12巻11号1538頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-通勤途上その他の事由〕
 一般的に業務上の災害と云えるためには当該労働者が企業目的遂行のために通常の業務を実施している場合に起つた災害であることが通例であるが又当該労働者の職務の性質上事業主の命令によつて私用を行うことも又当該労働者の業務に附随した職務であるとみるのが社会通念上妥当であると解される場合もあり得る。
 しかして本件についてこれをみるに(証拠省略)を総合すると【1】原告のヤス製作の動機は、原告が訴外Aに雇用される一〇日程前偶々九頭竜川で両人外二、三の者が鱒取りをやつていた時に右Aから「ヤスを作つておけや」と話があり、原告も「ヤスがあると都合が良い」と思い、ヤスの製作を思い立つたこと、【2】ヤスの材料は訴外Bが道路上で拾つた自動車のスプリングを原告が右Bから貰いうけたものであること、【3】その後原告は訴外Aに旋盤工として、雇用されたが、ヤスの製作について右Aから仕事の合間とか、昼休み作業終了後に作る様指示され、原告もその様な時間帯を見計らつて製作していたこと等の事実が夫々認められる。
 してみると、右ヤス製作の動機並びにその性質なるものは単に趣味を同じくする者同志の便宜のため(原告が使用しても良く、右Aが使用しても良い関係にある。)にヤスを作ることとなつたもので業務とは何ら関連性はなく、これが原告が右Aと雇用関係に入つた後においてヤスの製作を右Aが指示し、承認したとしても、その指示、承認は原告の業務として事業主の監督下にある指示、承認と異り、単なる原告と右A個人との間の私的な関係における依頼行為であり、ヤスの製作はそれによる私物作製行為であつて原告の業務と認めるのはいささか困難である。
 右認定に反しヤスの製作は業務上の顧客を鱒取りに招待するためのものであるとする(証拠省略)の右供述部分は措信できないし、他にこれを認むべき証拠はない。且又他に前段認定を覆すに足りる有力な資料は存しない。
 〔中略〕
 以上の事実からすると原告は砥石車を取替えた後は一度も雄型を研磨した事実は認められず結局ヤスを研磨中に災害にあい負傷したものと認めるのを相当とする。しかしてヤスの製作が前記の如く私的な関係における私物製作行為であると認定される以上その製作中に起つた災害はそれが企業の物的設備の瑕疵による災害であるか否か判断するまでもなく原告の請求は理由がない。