全 情 報

ID番号 05159
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 新出組生コン運転手事件
争点
事案概要  路肩崩壊により川に転落して死亡(業務災害)した運転手の遺族が道路管理者である県を相手として損害賠償を請求したケースで、将来に受給すべき遺族補償年金が損害額から控除されるべきか否かが争われた事例。
参照法条 国家賠償法2条2項
民法709条
労働者災害補償保険法16条
労働者災害補償保険法16条の2
体系項目 労災補償・労災保険 / 損害賠償等との関係 / 労災保険と損害賠償
労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 1974年11月20日
裁判所名 金沢地
裁判形式 判決
事件番号 昭和48年 (ワ) 275 
裁判結果 認容(確定)
出典 時報782号81頁/交通民集7巻6号1784頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕
 右認定の如き道路状態が営造物の瑕疵に当るか否かにつき判断するに、本件道路が被告石川県の管理にかかるものであり、国家賠償法第二条の公の営造物であることには、当事者間に争いがない。そして右法条にいうその設置または管理の瑕疵とは営造物が通常具備すべき安全性を欠いていることをいい、これに基づく国または公共団体の賠償責任については、その過失の存在を必要としないと解するのが相当であるところ(最判昭和四五年八月二〇日集二四巻九号一二六八頁)、本件事故現場付近の路肩部分については、一応コンクリート壁で補強されているが、そのコンクリート壁は約八・八メートルの間隔があけられその部分だけ中断しており、本件崩壊がその壁体のないところに発生していることを考えると、第一次的には、このような崩壊しやすい個所であるにも拘らず、右コンクリート壁を連続して設置しなかったことが問題であり、間隔をあけて設置した点に原始的な瑕疵があったといわねばならない。しかし右設置当時は今日のような自動車の激増が予想されなかった時代であり、かりに右間隔をあけたコンクリート壁の設置が、必要最少限度にとどめる目的のもとに設計されたもので、昭和二四年当時の状況としてはそれ自体合理的な処置であったとしても、道路管理者は、その後の自動車や観光客の増加等の社会状勢の変化に応じて管理態勢を変えて行くべきであり、右コンクリート壁を設置しなかった八・八メートルの部分については、付近の地形、過去の崩壊の事例等に照らし特別の注意をもって排水施設を良好な状態に保ち、降雨による路肩又はこれに接続する路面部分の地盤軟弱化を防止し、道路上を通過する車輛の通常の衝撃や重量に耐え得るよう道路を安全な状態に維持する義務があったというべきであり、第二次的にはこのような道路の安全状態維持のための管理に瑕疵があったものとみられるのである。本件被害車の重量は前述のとおりであるが、弁論の全趣旨によると、同車はこれまで正常に運行の用に供されていたもので、車輛関係法令に適合するものと認められ、また本件道路については本件被害車の運行を禁止又は制限する処置がとられていた事実は認められないから、本件道路を右被害車が通行することは、通常の利用方法とみなければならない。しかるに本件道路はこのような通常の利用にも耐え得なかったというのであるから、右設置又は管理の何れに該当するかを問うまでもなく、道路としての通常有すべき安全性を欠いていたものと結論することができ、この意味においても本件道路の瑕疵を肯定することができるできるのである。
〔労災補償・労災保険-損害賠償等との関係-労災保険と損害賠償〕
 労働者が第三者に対して損害賠償請求権を取得すると共に同一の事由によって将来労働者災害補償保険法による給付を受給し得る場合、この両者の関係は、相互補完の関係にあって、両者は併存するものと解すべく、ただ二重に損害の填補を得させるのは不合理であるから、損害賠償の責任を問うに当っては、災害補償を受けた価額の限度で損害賠償責任を免れ得るにすぎないと解される。従って保険受給者が損害賠償請求権を行使すことができなくなるのは、政府が現実に保険給付をして、保険受給者の損害の填補をなした場合に限られると解すべきである。
 そうすると、将来にわたって保険給付を受けることが確定していても、これをもって現実の保険給付を受けたということはできない。前記認定の如く原告Xは同法に基づく遺族補償年金一時金として金九九五、二〇〇円、葬儀料として金一四四、六八〇円の支給を受けているが、《証拠略》によれば、右年金一時金は年額四〇八、六五四円の割合による昭和五〇年五月までの分であり、昭和五〇年六月以降の年金は未支給となっていることが認められるから、右受給ずみの限度で損益相殺をしたものである。しかしながら右未支給の年金額を損益相殺として損害額から控除することはできないというべきである。