全 情 報

ID番号 05176
事件名 遺族補償費等不支給処分取消請求事件
いわゆる事件名 相馬労基署長事件
争点
事案概要  農協の支所で勤務する職員が勤務終了後自宅に帰る途中の自動車事故により死亡したケースで、遺族が本件事故は共済保険加入の勧誘に向う途中のものであり、業務上の死亡にあたるとして遺族補償を請求した事例。
参照法条 労働者災害補償保険法1条
労働基準法79条
体系項目 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 通勤途上その他の事由
裁判年月日 1977年3月28日
裁判所名 福島地
裁判形式 判決
事件番号 昭和50年 (行ウ) 2 
裁判結果 棄却
出典 労働民例集30巻5号925頁
審級関係 控訴審/05043/仙台高/昭54. 9.10/昭和52年(行コ)2号
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-通勤途上その他の事由〕
 Aは、昭和四八年一月三〇日午後六時ころから鹿島町(略)所在のB寿司で開かれた真野支所全職員による昭和四八年度事業計画立案会議(同会議はAの私的な都合により真野支所での通常勤務時間(午後五時)後に開かれた。)に出席し、同会議終了後の午後九時三〇分頃右B寿司を出て一旦真野支所に戻り、自己所有の軽自動車を運転して同所を午後九時四〇分ころ出発し、自宅のあるC部落の方向に進行中本件事故に遭つたもので、事故の現場は同人の通常の通勤経路上にあることが認められ、右認定に反する証拠はない。
 そうすると、本件事故はAの真野支所での勤務時間後に開かれた会議終了後の午後一〇時ころ、同人の通常の帰宅経路上で発生したことの事実からみると特段の事情のない限りAは、帰宅中に本件事故に遭つたものと推認するのが相当である。
 原告は、AがC方に共済保険加入の勧誘に行く途上本件事故にあつた旨主張し、乙第七号証、同第一一号証、同第一二号証の一、証人C、同Dの各証言、原告本人尋問の結果中には、Aが前記会議終了後C方に農協共済保険契約締結の勧誘のため立寄る予定になつていた旨の右主張にそうが如き記載及び供述が存するが、これらは成立に争いのない乙第一号証の一、一一、第二号証の一、二、第三号証、第四号証の三、第五号証の二、第一三号証の一、証人E、同Fの各証言に照らして措信し難く、又証人Gの証言及びこれにより真正に成立したものと認められる甲第一号証の一ないし四、同第二号証、同第一一号証、同第一三号証、成立に争いのない乙第八ないし第一〇号証、証人H、同Iの各証言及び原告本人尋問の結果によれば、亡Aは、昭和四七年度(昭和四七年三月一日から昭和四八年二月二八日まで)の農協共済保険勧誘目標額として一二八〇万円の割当を受けていたが、昭和四八年一月ころまでには一〇〇万円しか達成してなかつたこと、通常右勧誘は夏期の一定期間に勤務時間を利用して行うほかは、勤務時間外の早朝又は夜間を利用して行われ、右目標額達成については日頃上司から強く促されたり、勤務成績として評価されるため年度末にあたる時期には特に力を注ぐこと、Aは昭和四七年一〇月ころから真野支所での仕事に追われ、保険の勧誘に従事する時間が少なかつたこと、事故直前真野支所を出る際、通常より急いでいる様子が窺われたこと、事故当時も共済保険勧誘用のパンフレツト及び契約者に配付する手ぬぐいを携帯していたこと等の事実が認められるが、このような一般的状況事実のみでは未だ前記推認を覆すことはできず、他に前記推認を左右するに足る証拠はないので、原告の前記主張は採用できない。
 そうするとAの死亡は勤務終了後の退勤途中の事故によるものと認められ、その死亡は業務上の事由によるものではないというべきであるから、被告のなした本件処分は適法である。