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ID番号 05273
事件名 解雇無効確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 米軍座間基地事件
争点
事案概要  在日米軍基地日本人従業員に対する降格、整理解雇が有効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の要件
裁判年月日 1990年4月26日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和62年 (行コ) 88 
裁判結果 棄却
出典 労働判例562号22頁
審級関係 一審/03096/東京地/昭62. 9.29/昭和58年(行ウ)20号
評釈論文
判決理由 〔解雇-整理解雇-整理解雇の要件〕
 2 そこで、最初に、本件降格及び本件解雇には合理的理由がないとの控訴人の主張を検討する。
 (証拠略)を総合すると、控訴人は当時キャンプ座間米陸軍財政会計事務所会計部基金運用課会計技術職(基本給表1・職種番号7・等級4)であったところ、座間民間人人事事務所によって年間日本人従業員の一定割合について無作為抽出により行われていた職位給与管理調査の結果、会計維持事務職(基本給表1・職種番号381・等級3)の職務に従事しているに過ぎないことが判明したので、昭和四八年一月一五日控訴人が所属していた会計部基金運用課のA課長が控訴人を会計維持事務職(基本給表1・職種番号381・等級3)に変更することを発議し、同年二月二日契約担当官代理者Bが承認した上で同月一日付けで労管に対しその旨の人事措置要求書を提出したこと、同月五日労管は右人事措置要求書を受理し、同月二八日被控訴人所長が同意し、同年三月初旬ころ労管は座間民間人人事事務所を介して右旨の人事措置通知書を控訴人に送付することにより本件降格が行われたこと(本件降格が控訴人に通告されたのは、当審における控訴人本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によると同年三月二七日であると認められる。)、同年二月一二日付け太平洋米陸軍一般命令第五〇号によりキャンプ座間米陸軍財政会計事務所に対して間接雇用外国人を一二七名中四名を削減して一二三名にする部隊の再編成措置をとることが命じられ、同年三月二三日管理事務室長Cが会計維持事務職(基本給表1・職種番号381・等級3)二名を含む四名の人員整理を同年六月三〇日発効ですることを発議し、同年三月二八日契約担当官代理者Bが承認した上で労管に対し右旨の人事措置要求書を提出したこと、同日労管は右人事措置要求書を受理し、同月二九日被控訴人所長が同意し、同年四月四日控訴人(及びD)が解雇予定者であること等を内容とする在籍者名簿(採用年月日の順に控訴人及びDを表示)を財政会計事務所に掲示したこと、座間民間人人事事務所は控訴人に対し他職場の空席を紹介し、控訴人は少なくともその一(管理分析職)に応募したが採用されなかったこと、被控訴人らが控訴人に復職を確約した事実はないこと、同年五月二九日労管は控訴人に対し同年六月三〇日発効で控訴人を人員整理する旨の人事措置通知書(同年五月二五日付け)を交付することにより本件解雇が行われたこと、本件降格に係る人事措置要求書が日付を遡らせて作成されたことを除き、本件降格及び本件解雇についてはすべて被控訴人ら主張のとおりのMLCに従った手続がとられたことが認められる。当審において、控訴人本人は、座間民間人人事事務所が控訴人について職位給与管理調査をしたことはなく、本件降格及び本件解雇に関する書類は偽造されたもので人員整理の対象は六名であるのに四名とされており、座間民間人人事事務所は控訴人に対し他職場の空席を紹介したことはなく、控訴人が応募したこともないなどと右認定に反する供述をしているが、右供述部分は、(証拠略)考慮しても、前掲各証拠に照らして直ちに採用できるものではなく(なお、〈証拠略〉にも人員整理の対象が六名である趣旨の記載があるが、〈証拠略〉と対比すると採用できない。また、被控訴人らが原審で提出した昭和五八年九月二六日付け準備書面において財政会計事務所に基本給表1・職種番号42・等級3の事務職の空席がありそれを控訴人に提示したと記載されていることから、直ちに他に空席があって本件解雇は人員整理の必要がないのにされたものであると推定することはできず、右空席はその職種等から比較して控訴人の当時の職位に対応するものとはみられず、先述のとおり控訴人の職位については現実に人員整理の必要があったものと認められる。)、他に右認定を動かすに足る証拠はない。なお、本件降格は、昭和四八年二月二八日になって被控訴人所長が同意し、控訴人に通告されたのは同年三月二七日であるにもかかわらず、同年二月一日付けでされているものの、このことにより控訴人に不利益が生じた事実を認めるに足る資料はないので、この点において本件降格が違法になると解すべきではない。
 以上のとおりであるから、本件降格及び本件解雇は、いずれも適法であり、合理的理由に欠けるところはないというべきである。