全 情 報

ID番号 05283
事件名 不利益処分取消等請求控訴事件
いわゆる事件名 甲山町事件
争点
事案概要  町立中学校教頭に対する県教育センターでの研修命令を違法としてなされた損害賠償請求につき、右命令は違法ではないとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
地方教育行政の組織及び運営に関する法律45条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 労働義務の内容
裁判年月日 1989年8月21日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和61年 (行コ) 41 
裁判結果 取消棄却(確定)
出典 高裁民集42巻2号301頁/時報1336号89頁/東高民時報40巻5-8号94頁/タイムズ722号250頁/労働判例548号78頁
審級関係 一審/06478/浦和地/昭61. 3.17/昭和57年(行ウ)8号
評釈論文 松本光一郎・平成元年度主要民事判例解説〔判例タイムズ臨時増刊735〕394~395頁1990年10月/森晃憲、福本啓二・教育委員会月報471号31~34頁1989年11月
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-労働義務の内容〕
 確かに、前記認定事実によれば、本件各研修命令は、A中の教頭として勤務していた被控訴人に対しセンターにおいて通算して昭和五五年一月一六日から昭和五八年三月三一日までの三年余に亘り研修を義務づけるものであるから、被控訴人の職務内容、勤務場所等に変更をきたすものであることが認められる。
 しかしながら、前記認定のとおり、被控訴人は本件各研修命令後も従前と同様にA中教頭としての身分を有し、その地位及び基本的給与については変更もないのであるから、本件各研修命令を直ちに転任処分と同一であるということはできない。そして、町教委は、地教行法四三条に基づき服務監督権者として、県費負担教職員である被控訴人に対し、同法四五条により職務命令として研修を命ずることができるのであり、同条によれば、右研修の方法、内容、態様等については格別制限もなされていないから、町教委は、教育公務員としての職責を遂行させるために必要がある場合は、被控訴人を現職のまま相当長期間にわたり学校以外の教育関係施設で研修させることもできるものと解するのが相当である。この場合、研修命令により必然的に研修員の職務内容、勤務場所等に変更をもたらすこととなるが、それは右態様の研修命令に当然随伴する事態であるから、右のような勤務条件に変更をもたらす点があってもそのため町教委はその研修命令を発することができないとかその命令が違法であるとはいえない。