全 情 報

ID番号 05329
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 全駐労北海道地本千歳支部組合員事件
争点
事案概要  全駐労所属の組合員が剰員として整理解雇されその効力を争った事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号
労働組合法16条
日米安保条約第3条に基く行政協定に伴う民事特別法1条
体系項目 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の要件
解雇(民事) / 解雇手続 / 同意・協議条項
裁判年月日 1954年4月13日
裁判所名 札幌地
裁判形式 判決
事件番号 昭和28年 (ヨ) 313 
裁判結果 申請却下
出典 労働民例集5巻2号202頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇手続-同意・協議条項〕
 本件解雇が、協約第十五条に定める労働協議会の協議決定を得られないままなされたことも、被申請人の明らかに争わないところである。そこでまず協約第十五条第五号の主旨が、単に解雇の一般的基準についてのみ協議決定すれば足るのか、それとも具体的に個々の解雇の要否、理由、解雇人数、その方法などをもその対象とするのか、という点について考察する。
 〔中略〕
 解雇の一般的基準について労働協議会で協議決定しなければならない、ということは単に、基準を定めるばあいには協議の上で定めるということを意味するにとどまり、解雇の事由、員数、人選、手続、条件などのうち基準的な事項のすべてを協議決定しなければ解雇できないという主旨ではないと解するのが相当である。したがつて、〔中略〕労働協約第十五条の協議決定事項に該当すると認められる。「人員整理の手続にかんする臨時指令」が、人員整理のばあいにおける人選手続についてのみ規定して、いかなる場合に、どれだけの人数を解雇するか、を定めていないとしても、現に定められた事項のみを遵守して解雇を実施すれば足り、特にそれ以外の事項について、新たに協議決定を経る必要はないものということができる。しかして、本件解雇が、右臨時指令の規定に従つて行われたことは、申請人らの明かに争わないところであるから、(被申請人の前記(ろ)(は)の主張を判断するまでもなく)労働協約第十五条に違反した無効な解雇であるとの申請人らの主張は採用できないのである。
〔解雇-整理解雇-整理解雇の要件〕
 被申請人は米国政府の要求により、その必要とする労務を、補償を得て提供するものであり、これらの労務者を引続き雇傭することが米国政府の利益に反すると米軍担当官が認めたばあいは直ちにその人員を解雇され、米国政府の担当官が行う解雇の決定は最終的のものとする旨の労務基本契約による義務を負担しているのであるから、使用主である駐留軍から人員整理の要求があつたばあい、その要求に対し政治的な折衝を行う余地はあるとしても、最終的には整理人員に相当する労務の提供を中止し、その分の補償を受領する権利を失うにいたるのであるから、それにもかかわらずなお自己の費用をもつて労務者の雇傭を継続する特別の事情でもないかぎり、これを解雇せざるをえない立場にあるということができる。
 これらの事情をあわせ考えれば、被申請人が申請人らに示した解雇の理由ならびに、解雇にいたるまでの被申請人のとつた措置は、万全のものではなかつたとしても、客観的に是認しうる程度のものというべきであつて、これをもつて解雇権の濫用とみることはできないのである。申請人らのこの点の主張も理由がない。