全 情 報

ID番号 05344
事件名 地位確認訴訟事件
いわゆる事件名 日本専売公社事件
争点
事案概要  日本専売公社の非常勤嘱託医に対する解雇につき、常勤嘱託医制度の導入にともない本人がこれを拒否したことを理由にしたものであり、相当の理由があったとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 企業解散・事業の一部廃止・会社制度の変更
裁判年月日 1955年3月7日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和27年 (ワ) 8045 
裁判結果 棄却
出典 訟務月報1巻2号37頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-企業解散・事業の一部廃止・会社制度の変更〕
 昭和二十六年七、八月頃被告公社足立工場の従業員は七百名位おり、非常勤の医師ではこの従業員と家族の診療を十分に行うことができないので、常勤の医師にしてもらいたいと従業員からの要望があり、かつ足立工場は近く他に移転して規模を三分の一位大きくすることになつていたので、足立工場総務課では非常勤の原告を常勤医師に切りかえる計画をたてた。そこで、昭和二十七年七月十七日頃原告に右の事情を告げて、常勤になる希望の有無を尋ね、原告にその希望がなければ他に常勤の医師をおく必要があるから、被告に辞めてもらうほかない旨を告げたところ、原告は常勤を希望しないと答えたので、同年七月二十八日A総務課長が口頭で原告に対し、同年八月三十一日限り辞めてもらいたいと、解嘱の予告をした。かくて原告に対し本件解嘱の意思表示がなされた。
 かように認めることができる。原告本人の供述中以上の認定に反する部分は採用することができない。
 非常勤の嘱託医たる原告に、被告公社職員の身分保障の規定は適用がないことさきに説明したとおりであるから、原告に対する解嘱の意思表示は原告の意にそわないものであつたところで、被告公社として相当の理由がある限りこれをなしうべきものと解するを相当とすべく、前記認定の事実に徴すれば本件解嘱の意思表示は被告公社としてはやむを得ない事由により、正当な手続を経てしたものというべきであり、原告のいうように、被告の意思を一方的に押しつけ、労使対等の原則を破つたことにならないこと、いうまでもない。
 右解嘱の前後を通じて、被告公社が原告の真意を汲み取り、これをなつとくさせるに適切な処置をとつたか否かは、疑問の余地なしとしないが、そのために本件解嘱が正当な理由に基かずに行われたとすることはできない。