全 情 報

ID番号 05388
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 サンウェーブ工業事件
争点
事案概要  組合委員長による昇格発令の固辞は、「職務上、服務上の指示命令に従わないため、会社の秩序を乱したとき」という就業規則の懲戒解雇事由に該当するが、権利濫用にあたり無効とされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
民法1条3項
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務妨害
裁判年月日 1964年6月30日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和36年 (ヨ) 2137 
裁判結果 申請一部認容・一部却下
出典 労働民例集15巻3号804頁/時報379号45頁
審級関係
評釈論文 萩沢清彦・ジュリスト380号138頁
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務妨害〕
 1 (第一次解雇の効力)
 被申請会社が本件昇格等を発令したのは、前認定のように、戸田製作所の生産目標達成の隘路となつていた塗装工程の能率を上げるため、同部門に新たに現場日程係をおくこととし、学歴、研究心、人望等を考慮して、申請人をその適任者と認めたためであつて、申請人主張のように、被申請会社が申請人を他の組合員と反目させるなど、反組合的意図に出たものと認めるに足りる疎明はない。従つて、申請人は、被申請会社の従業員として、本件昇格等の発令に従うべきであつたのに、これを固辞し、被申請会社の再三の説得にかかわらず、最後まで翻意しなかつたことは、被申請会社の人事管理を妨げ、その秩序を乱すものとして、被申請会社の従業員に対する懲戒事由を定めた就業規則第五七条第四号の「職務上、服務上の指示命令に従わないため会社の秩序を紊したとき」に該当するものといわなければならない。
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕
 以上諸般の点をかれこれ考慮するとき、被申請会社が、申請人に対し本件昇格等の発令に従うことのみを要求し、申請人がこれに従わないとみるや、あえて、懲戒処分として最も情状の重い非行に対して科せられるべき解雇をもつてのぞむことは、行為と懲戒との間に著しく軽重の均衡を失した処分といわざるを得ない。従つて、申請人が本件昇格等の発令に従わなかつたことを理由とする第一次解雇は、懲戒解雇に値しない申請人に対し就業規則の懲戒規定を不当に適用したものであつて、権利の濫用として、無効であるといわなければならない。