全 情 報

ID番号 05413
事件名 解雇無効確認請求事件
いわゆる事件名 名古屋タクシー事件
争点
事案概要  試用期間中のタクシー運転手が、誓約書等の書類を提出しなかったことを理由として、右運転手にした解雇が有効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法21条
体系項目 労働契約(民事) / 試用期間 / 法的性質
労働契約(民事) / 試用期間 / 本採用拒否・解雇
裁判年月日 1965年6月7日
裁判所名 名古屋地
裁判形式 判決
事件番号 昭和39年 (ワ) 3237 
裁判結果 棄却
出典 労働民例集16巻3号459頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-試用期間-法的性質〕
 前記就業規則第三三条の規定に基き検討すれば、被告会社の行う試採用は、当初三ヶ月の試用期間内に、本採用を妨げるような合理的理由のない限り本採用の決定がなされることを条件とする旨の特約ある雇用契約と解せられ、試用期間を設ける趣旨は、その間に現実に稼動させ、被用者の能力、人格、その他従業員としての適格性につき調査せんとすることにあるものと解する。従つて試用期間中は、就業規則上の制限なしに解雇することができる大巾な解雇権が留保されているものと解する。
〔労働契約-試用期間-本採用拒否・解雇〕
 被告会社の解雇理由につき判断する。
 被告主張の一項(一)について、〔中略〕被告会社は、六日A庶務係長を通じ、原告に対し、誓約書、家族調書(健康保険組合)、家族表及び入社志願票の所定の用紙を交付し、必要事項記入の上右書類の提出を求めたこと、原告はこれらの書類を被告会社に提出しなかつたこと、誓約書は、同時に身元保証書をも兼ねており、入社志願票は、訴外B株式会社への入社志願票であり、家族調書は、同訴外会社の健康保険組合に加入するための必要書類であること、被告会社は設立後日数浅く、且その資本の半額は、同訴外会社の出資によるものであることから被告会社の従業員は全て、同時に同訴外会社の非常勤嘱託として採用され、それに基き、被告会社は、同訴外会社から従業員の福利等につき援助を受けていること、被告会社の原告に対する解雇の意思表示は、原告が前記各書類を被告会社に提出しなかつたことを理由になされたこと等が認められ、右認定に反する原告本人尋問の結果はたやすく措信することができず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。これらのことから判断すれば、前各書類は、被告会社が従業員を採用するについて必要な書類であり、右各書類が提出されない場合被告会社と従業員との雇用関係につき重大な支障をきたすものと認められる。ところで被告は、被告会社の内規に基き被告会社の従業員として適格者と認めた場合に本採用とする旨主張している。従つて試用期間中の解雇も、右内規に基き被告会社従業員としての適格者と認められない場合になされるものと推認されるところ本件全証拠によるも右内規の内容ないしは存在する事実を認めることができない。しかし本件解雇の意思表示は、前記認定の如く原告と被告会社の雇用関係に重大な支障をきたすものと認められる理由に基いてなされたものであることから、本件解雇は理由があり、他に本件解雇が解雇権の乱用であることを認めるに足りる証拠はない。