全 情 報

ID番号 05420
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 豊国機械工業事件
争点
事案概要  解雇後他の全従業員が昇給している場合、解雇が無効とされた労働者についても昇給を停止しなければならないような特別の事由は認められないとして、同様の昇給があったものとして賃金の支払いが命ぜられた事例。
参照法条 労働基準法24条
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権と考課査定・昇給昇格・降格・賃金の減額
裁判年月日 1965年8月16日
裁判所名 名古屋地
裁判形式 判決
事件番号 昭和39年 (ヨ) 1238 
裁判結果 申請一部認容,一部却下
出典 労働民例集16巻4号605頁
審級関係
評釈論文 渡辺章・ジュリスト390号145頁
判決理由 〔賃金-賃金請求権と考課査定・昇給昇格・賃金の減額〕
 申請人は、昭和三九年三月一日から昇給すべきである旨主張し、被申請人会社は、申請人に対しては昇給の意思表示をなしていない旨主張しているのでこの点につき判断する。
 申請人会社は、全従業員に対し昭和三九年三月一日から昇給を行つたことについて、被申請人会社は明らかに争わないので自白したものとみなす。
 本件懲戒解雇は前記認定の如く無効であるから、申請人は、本件懲戒解雇がなされなかつたと同様の地位を有するものである。そして、本件懲戒解雇がなされなかつたならば、特別の事情のない限り、申請人についても他の従業員と同様に昇給したものと考えられる。又前記の如く仮処分命令により申請人は復職したのであるが、このような場合労働条件については、他の従業員と同様に取扱わねばならず、解雇後復職までの間に労働条件が改訂された場合は、改訂された労働条件に従つて処遇されなければならない。このことは賃金についても同様で、労働契約の集団的性格から考え特別の事情のない限り他の従業員と同様に処遇されなければならない。従つて申請人につき、昇給を停止しなければならないような特別の事由の認められない本件において、申請人についても昭和三九年三月一日から昇給したものとして取扱わねばならず、被申請人会社の、申請人に対しては昇給の意思表示をなしていない旨の主張は採用し得ない。
 〔中略〕
 申請人の昇給後の賃金は時給六〇円であることが認められ、〔中略〕
 申請人の一日の平均労働時間は八時間であり、一ヶ月の平均就労日数は二〇日であることが認められ、以上各認定に反する証拠はない。従つて申請人の昭和三九年三月一日以後の一ヶ月の賃金は計算上金九、六〇〇円となる。