全 情 報

ID番号 05489
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 大阪西鉄観バス事件
争点
事案概要  派遣ガイドに対する暴言、いやがらせ等を理由とする観光バス運転手に対する出勤停止処分につき、処分事由が存在しないとして無効とされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 業務妨害
裁判年月日 1990年10月26日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成1年 (ワ) 1159 
平成1年 (ワ) 4332 
裁判結果 一部認容,一部棄却
出典 労経速報1413号7頁/労働判例574号36頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-業務妨害〕
 二 本件各処分事由の有無
1
 〔中略〕
 被告は、就業規則で本件第一次、第二次処分根拠(各懲戒事由)を規定しており、第一次処分理由事実は同六三条二項二、三、一四各号に、第2次処分理由事実は同項二一号の懲戒解雇事由に各該当するとしたうえ、情状酌量により、原告に対し、本件各処分を行ったことが認められる。そこで、本件各処分理由事実の有無について検討する。
 (1) 第一次処分について
 〔中略〕
 原告のAに対する言動は必ずしも侮辱的なものとはいえず、同女も好意でバスの天井拭きを手伝うこともあるのであるから、原告が右手伝いを依頼したことは直ちに不当といえないし、同女がこれを断ることが可能であり、事実、同女は天井拭きの手伝いをしないことになり、いったんは原告車に同乗し、被告営業所を出発したこと等が認められ、これらを総合すれば、原告のAに対する言動が就業規則六三条二項二号、三号、一四号に該当するとはいい難い(なお、被告は、原告がAに対し、「お前きついんか。きついんやったらこんでもええぞ」と発言し、「嫌味を繰り返した」旨を主張するが、これを認めるに足りる証拠はない)。
 被告は「原告は、ワンマン運行が厳禁されていることや、ガイドの補充が不可能であることを知っていたのに、Aと口論したうえ、同女との対立を解消する努力義務を怠り、その結果、同女に降車を余儀なくさせ、ワンマン運行を行ったものであるから、被告の観光バス事業の安全を危うくし、職場の秩序を乱した」旨を主張する。
 しかしながら、前記のとおり、原告のAに対するB車庫における言動は直ちに不当であるとはいえないのみならず、両者間のトラブルは一旦解消したのであるし、その後の原告のAに対する言動についても後記(2)説示のとおりであり、被告の右主張は理由がない。
 (2) 第二次処分について
 〔中略〕
 Aは、原告との前記トラブルの後、原告車に乗車しC駅まで乗車したが、その間、原告は終始無言であり、シャクリ運転を行ったので、同女は嫌がらせと感じて再び気分を害し、原告車を降車したこと、そのため原告は往路はガイドなしのワンマン運行を行ったこと、クラブ及びD会社から、被告に対し抗議があったこと等が認められるが、原告のシヤクリ運転は日項からの癖であり、ことさら、Aに対する嫌がらせとして行ったとは認め難いこと、Aも車中では終始無言であり、原告が無言でC駅までバスを運行したことをAに対する嫌がらせとはいえないこと、Aが原告に対し特に悪感情を抱いたのは過労のため精神的、肉体的に極度に疲労していたためと推認されること、Eは、Aの降車意思を知った際、安易に降車を承諾したうえ、原告にワンマン運行を指示したこと、AはEの承諾により自己の降車につき被告の承諾があったものと判断して降車したこと、クラブの中にはAの降車行動に対し、批判的意見があること等を総合すれば、原告のAに対する右言動は同女に降車を余儀なくさせる程度に違法なものとはいえないし、原告の言動と同女の降車及びこれによるワンマン運転との間に相当因果関係を認めることはできない。
 また、被告において、Aの降車問題を原因とするガイド派遣の停止等や営業収益が減少した事実はなく(大森)、特に被告の信用が失墜したことを認めるに足りる証拠はない。
 そうすると、原告に就業規則六三条二項二一号に該当する事由があるとはいえないから、第二次処分も理由がない。
 (3) 以上の次第であるから、その余の点について判断するまでもなく、本件各処分は無効である。