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ID番号 05493
事件名 是正勧告取消請求事件
いわゆる事件名 札幌労基監督官(共永交通)事件
争点
事案概要  労基法二四条に違反するとして監督官がなした是正勧告につき取消請求がなされた事例。
参照法条 労働基準法101条
行政事件訴訟法3条2項
体系項目 監督機関(民事) / 監督権限
裁判年月日 1990年11月6日
裁判所名 札幌地
裁判形式 判決
事件番号 平成1年 (行ウ) 9 
裁判結果 却下
出典 労働判例576号59頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔監督機関-監督権限〕
 労働基準監督官の発する是正勧告というのは、一般に労働基準監督行政を実施した際に発見した法違反に対する行政指導上の措置に止まるもので、何らの法的効果をも生ずるものではないと解されている。
 すなわち、是正勧告は、これにより法違反の状態を当然に変更するものではなく、また、勧告を遵守しない使用者に対し、罰則を科するとか、その他これの遵守を強制する制度も設けられておらず、あくまで、勧告を受けた使用者が自主的に勧告にしたがった是正をするのを期待するものに過ぎない。使用者は、勧告に従った是正をしなかったとしても、その法的地位に何らの影響も受けないのである。
 なお、原告主張の本件是正勧告の内容からして、本件是正勧告も右の意味での是正勧告といえる。
 ところで、行政事件訴訟法三条二項の抗告訴訟の対象たる処分とは、当該措置がそれ自体において直接の法的効果を生ずる行為、すなわち、直接に国民の権利自由に対する侵害の可能性のある行為に限られると解される。したがって、何らの法的効果も生じない本件是正勧告が抗告訴訟の対象とならないことは明らかである。
 〔中略〕しかしながら、労働基準監督官が検察官に事件を送致するのは、使用者が是正勧告に従わなかったという事実に基づくのではなく、使用者に労働基準法違反が存するという嫌疑に基づくのである。また、労働基準法違反の事実の態様、労働基準監督官の抱く嫌疑の程度によっては、是正勧告を発せずに直ちに検察官に事件を送致することもあれば、是正勧告を発しても事件を検察官に送致しないこともある。さらに、送致された事件が当然に起訴されるわけでもない。
 以上のように是正勧告と刑事処分に伴う不利益とを法律上結び付けることができない以上、原告の主張を採用することはできない。