全 情 報

ID番号 05503
事件名 退職金等請求事件
いわゆる事件名 小川重機事件
争点
事案概要  営業成績不振のため給料の一部を返上する旨の念書を差し入れて、ほぼ一年後に退職願を提出し、退職金計算書を受け取り出社していない者につき、その後会社が懲戒解雇したとして退職金の支払いを拒否したのに対して、退職願の提出により雇用契約は合意解約されたものである等として未払の給料、退職金および懲戒解雇によりこうむった慰謝料等を求めて訴えた事例。
参照法条 労働基準法11条
労働基準法3章
労働基準法2章
労働基準法89条1項9号
体系項目 賃金(民事) / 退職金 / 懲戒等の際の支給制限
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の限界
退職 / 合意解約
裁判年月日 1991年1月22日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和62年 (ワ) 7068 
昭和63年 (ワ) 6259 
裁判結果 一部認容,一部棄却
出典 労経速報1420号3頁/労働判例584号69頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔退職-合意解約〕
 原告は、被告に対し、昭和六二年四月三〇日付けで「同年五月末日をもって退職願いたく申し上げます」と記載した退職願を提出していること、同年五月末日が休日であったため、同月三〇日に出社し、担当部署に退職の挨拶をし、退職金計算書(書証略)を受け取り、以後出社していないこと、同年六月一日以降被告の側で原告に対し出社を促すような行動を取っていないこと、雇用保険被保険者資格喪失確認通知書にも原告の離職年月日は同年五月末日と記載されていることが認められることからすると、原告、被告間の雇用契約は、原告の右退職願が被告からの雇用契約の解約申し込みに対する承諾とまでは認められないとしても、これによる原告からする解約申し込みに対する被告の承諾により、昭和六二年五月末日までには合意により解約されたものと認めるのが相当である。
〔賃金-退職金-懲戒等の際の支給制限〕
 〔中略〕
 被告の退職金規定には、「懲戒解雇された者には退職金を支給しない」旨の定めはあるものの(この事実は当事者間に争いがない)、懲戒解雇に相当する行為があった者には退職金を支給しないとの規定は存在しないことが認められる。そして、原告、被告間の雇用契約が昭和六二年五月末日までに合意解約により終了したことが前判示のとおりである以上、この後に被告が原告を懲戒解雇する余地はない(被告の懲戒解雇が同年六月一日以降に決定されたものであることは先に認定したとおりである)ものというべきであるから、被告の抗弁は主張自体失当というほかない。
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の限界〕
 そもそも被告が懲戒解雇事由として主張するところは、要するに、原告の営業実績が被告の指示どおりに挙がらないということであると解せられるところ、
 〔中略〕
 被告は、就業規則15条において、「会社は社員が次の各号に該当するときは通常解雇する」旨を定め、その2号において、「勤務成績又は能率が不良で就業には適しないと認められたとき」と規定していることが認められるのであるから、これを理由に原告を通常解雇するならともかく、懲戒解雇することができないことは就業規則上明らかというべきである。