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ID番号 05512
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 国鉄(岡山鉄道管理局)事件
争点
事案概要  駅長が「昇給欠格事由」ありとして上申したことにより定期昇給差別を受けたとして、右駅長を相手として損害賠償を請求した事例。
参照法条 労働基準法11条
労働基準法2章
労働基準法3章
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権と考課査定・昇給昇格・降格・賃金の減額
労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償
裁判年月日 1991年1月31日
裁判所名 岡山地新見支
裁判形式 判決
事件番号 昭和60年 (ワ) 1 
昭和60年 (ワ) 10 
裁判結果 棄却
出典 労働判例582号40頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-賃金請求権と考課査定・昇給昇格・賃金の減額〕
 原告には何等昇給欠格事由がないのに被告により不当に右事由ありとして上申された結果、原告が右欠格者として取り扱われることとなったとすれば、これにより、原告が前記債権を後日満足させられるだけでは充たされない精神的苦痛を蒙るということは充分考えられる。したがって、原告の主張第5項(四)記載の慰謝料請求権の存否については、更に充分に検討する必要があるというべきである。
〔賃金-賃金請求権と考課査定・昇給昇格・賃金の減額〕
〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕
 凡そ人事管理を適正に行うとともに、企業秩序を維持し、且つ、企業に対する社会的評価を損なわないようにするためには、職場外でなされた職務遂行に関係のない企業構成員の所為であっても、その者の処遇評価の際にはこれを考慮の対象とすることが許される場合もあり得るというべきである。
 しかして、本件当時、新見駅長であった被告としては、昇給欠格事由があると思料する部下職員についてはこれを上長者に対して報告する義務を有していたものであり
 〔中略〕
 一方、
 〔中略〕
 及び被告の供述によると、被告は、前記のとおり争いのない失火に関する事実関係及び報道機関の報道状況並びに原告が出火建物の借り受け人であること等を間もなく知り、これらがなるほど国鉄の職務遂行には直接関わりのない事柄であるとしても、これが国鉄の企業イメージに関わる事柄として上長者への報告の対象になると考えたことが認められるところである。
 このように前記【2】の事由はもとより事実無根でも何でもないのであり、また、その内容に鑑みると、前記のとおり上長者への報告義務を有する被告としてこれが報告をしその判断資料に供してもらう必要があると考えたのも無理からぬところがあるというべきである。原告においてこれが国鉄から不利益処分を受けるに足りるような事柄ではないと考えるのであれば、右のように認定処分をした認定権者の判断をこそ争うべきである。