全 情 報

ID番号 05515
事件名 雇用関係存在確認等請求事件
いわゆる事件名 国鉄清算事業団(郡山客貨車区)事件
争点
事案概要  勤務態度不良、業務指示違反、業務妨害、暴言等を理由にして懲戒免職処分とされた旧国鉄職員がその効力を争つた事例。
参照法条 日本国有鉄道法31条1項
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 暴力・暴行・暴言
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務妨害
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用
裁判年月日 1991年2月7日
裁判所名 福島地郡山支
裁判形式 判決
事件番号 昭和61年 (ワ) 97 
裁判結果 認容
出典 労働判例585号10頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-暴力・暴行・暴言〕
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務妨害〕
 本件懲戒処分の対象となる非違行為は、その量においては相当多いと言わざるを得ないが、被告の本件懲戒処分が、決定的といえる重大な特定の行為を主張するのではなく、原告らの日々の業務の過程で発生した細々とした非違行為の累積を前提として考えられていることからすれば、主張の非違行為のなかで積極的に認定される割合も問題としなければならない。この観点からすれば、前記のとおり、その割合は決して高いものとは言えず、かえって、原告X1、同X2については半分以下であることが指摘できる。
 その質においては、かつて経験したことのない未曽有の事態の下で、いやがうえでも先鋭となった労使の対立状況下でのものであることを考慮すれば、部分的には悪質なものもあるが、全体としては「耐えがたいほど悪質」であるとまでの評価はできないものと言わざるを得ない。
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕
 原告らが同時期に懲戒処分を受けた取下前原告であるA、B、C、Dらとの比較において、特に懲戒解雇という最も重い処分に付さなければならなかったかの合理的理由については、明らかではない。もっとも、右取下前原告らには、昭和五七年以前にいかなる懲戒処分歴があったのかが不明ではあるが、国鉄の分割・民営化が問題となり、それに向かっての管理の強化がなされ、これに対する抵抗という状況下での処分の比較考量をなすうえでは、昭和五七年ころを境にして、処分の性質が異なるものと推認できるから、それ以前の処分歴は重要とは考えられず、原告らの受けた本件処分は、右取下前原告らの受けた処分と均衡を失しているものとの疑いが存する。
 以上の原告らに対してなされた懲戒免職処分の処分事由である非違行為の種類、数、期間とそれらの非違行為そのものが業務執行に与えた影響等の違法の程度、それらがなされたその背景、社会的事情、本件処分の原告らに与える影響、同時期に同種の非違行為によって懲戒を受けた者との均衡等本件記録に現れた一切の事情を総合考慮するならば、原告らに対する本件懲戒解雇の処分は、その行ったと認められる非違行為等の情状と均衡を失しているものと評することができ、社会通念上著しく妥当を欠くもので、懲戒処分における裁量権を逸脱しており、従って、本件各懲戒解雇処分は無効というべきである。