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ID番号 05716
事件名 懲戒処分等取消・研修命令取消請求控訴事件
いわゆる事件名 佐伯町立津田小学校事件
争点
事案概要  小学校の教員が、校長によりなされたクラス担任を解く旨の職務命令および教育事務所で研修を命じる職務命令につき、その取消と、右研修を命じる職務命令等に従わず授業を混乱させたとしてなされた教育委員会による停職三カ月の懲戒処分の効力を争った事例。
参照法条 地方教育行政の組織及び運営に関する法律29条1項
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反
裁判年月日 1990年9月13日
裁判所名 広島高
裁判形式 判決
事件番号 昭和61年 (行コ) 4 
裁判結果 棄却
出典 行裁例集41巻9号1456頁/労働判例572号85頁
審級関係 一審/06479/広島地/昭61.11.19/昭和53年(行ウ)16号
評釈論文 竹内俊子・教育判例百選<第3版>〔別冊ジュリスト118〕180~181頁1992年7月/齋藤周・労働法律旬報1264号43頁1991年5月25日
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務命令拒否・違反〕
 本件紛争の発端及び拡大の責任の一端は、控訴人の担任する児童の保護者であり、被控訴人県教委の職員であるA、被控訴人県教委の監督下にある佐伯町教育委員会の課長であったBらが、控訴人の組合活動等を嫌悪する余り、児童及び他の保護者らを巻き込んで控訴人の思想、信条等を追求し、満足する回答が得られないとみるや、自己の要求を押しとおすべく、児童を登校させないという行動に出たことにあることは否定できないところである。また、被控訴人校長にも、控訴人は五年梅、松組を担任してからまだ日が浅かったのであり、前記のとおり保護者の行動に問題があったのであるから、控訴人に保護者との話し合いを勧めるだけでなく、より積極的に保護者の態度をたしなめる等の行動があってしかるべきであったと思われる。しかし、被控訴人らが、被控訴人県教委の職員である保護者らを煽動して学校現場を混乱させ、控訴人に対する本件懲戒処分、本件研修命令を出させる状況を作出したとの証拠は見当たらない。かえって、被控訴人校長としても、万全ではないにしても、事態を収拾すべく、控訴人と保護者の間に立って、控訴人に種々の助言を与えていたのである。しかるに、控訴人は、自己の信念、正当性を押し通そうとする余り右助言に耳を貸そうとせず、このことが保護者の不信感を強め、紛争を拡大させる一因となったことも否定できない事実である。紛争が拡大し、控訴人と保護者との間での事態収拾が困難となり、前記のとおり本件第一次研修命令、本件担任解除命令が出たのであり、しかも、右各命令には後記のとおり明白な瑕疵あるいはこれに従えば違法な行為を行う結果になるような瑕疵は認められないのであるから、このような場合、児童の教育に携わる教育公務員としては、児童と離れざるを得ないという無念な心情はわからないではないが、ここは混乱を避けるため自ら一歩引き下がり、右各命令に従うべき義務があったというべきである。しかるに、控訴人は、自己の考えに固執する余り、前記のとおり右各命令に従わないのみならず、再三にわたって授業を混乱させ、児童に不安を与えるとともに教師に対する不信の念を強めさせたことは明らかであり、ひいては保護者及び地域住民の信託に背いた結果を招いたことは動かしがたい事実であり、これらは地公法二九条一項各号に該当するものと認めることができる。