全 情 報

ID番号 05735
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 アサヒ三教事件
争点
事案概要  英会話教室の営業を目的とするA会社が英会話教師の雇用を別会社に委ね、そこから派遣を受ける形態をとることにし、その会社の方針に基づいてA会社に英会話教師として雇われていた者が、右派遣会社と雇用契約を締結したのちに、A会社との雇用契約の存続の確認を請求した事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 労働契約(民事) / 成立
退職 / 合意解約
裁判年月日 1990年12月14日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和63年 (ワ) 705 
裁判結果 棄却
出典 労働判例576号30頁/労経速報1418号24頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-成立〕
 A会社は前記認定のとおり被告の外国人教師の管理をしこれを英会話の講師として派遣することなどを目的として設立されたものであり、A会社に移籍させるにあたりその雇用条件にほとんど変更がないとされていたのであるから、勤務内容、勤務場所及び給与額に変更がないことは、雇用主に変更がないことを推認させるものではない。また、第二契約締結後も原告らに対する労務指揮及び給与の支払を被告が行っていたことを認めるに足りる的確な証拠はなく、かえって、A会社は、前記認定のとおり被告とは別の法人格を有しており、第二契約の締結作業はA会社の従業員が行い(〈証拠略〉)、A会社との雇用契約締結後の給与の支払はA会社がしており(〈証拠略〉)、独立した法人としての実体を欠くものと認めることはできず、右各事実と前記認定の被告代表者の外国人教師に対する説明等に照らすと、被告とA会社が実質的に同一であり、第二契約が単に雇用主の名称を変えたにすぎないと認めることはできず、第二契約は、被告とは別の法人格を有するA会社との間での雇用契約であると認めるのが相当である。
〔退職-合意解約〕
 原告は被告と別個独立した法人であるA会社と雇用契約(第二契約)を締結したこと、A会社は被告の外国人教師の人事管理をし、これを英会話講師として派遣するために設立されたものであること、被告はA会社から外国人教師の派遣を受けて従来どおり英会話教室を経営しようとしたこと、被告に雇用されていた外国人教師は被告に残ることもA会社に移ることもできるとされたが、A会社に移る方法としてA会社と新たに雇用契約を締結することとしたこと及びこのようにしてA会社と雇用契約を締結した外国人教師は被告に派遣されて従来どおり英会話の教授をすることが予定されていたことと、原告が被告から控除された社会保険料の返還を受けるに際し被告を退職する旨の確認と右金員の受領を表す書面に署名していること(〈証拠略〉)を総合すると、原告がA会社との間で第二契約を締結することは、被告との間の第一契約を解消することが前提となっていたと認められ、第二契約と両立しえない第一契約は、昭和六〇年七月三日合意解約されたと認めるのが相当である。