全 情 報

ID番号 05736
事件名 不当労働行為救済命令取消請求事件
いわゆる事件名 男鹿市農協事件
争点
事案概要  組合の積極的活動家を課長職に配置しないことを不当労働行為として、課長職に配置することを命じた労働委員会の取消請求の事例。
参照法条 労働基準法2章
労働組合法7条1号
体系項目 労働契約(民事) / 人事権 / 昇給・昇格
裁判年月日 1990年12月17日
裁判所名 秋田地
裁判形式 判決
事件番号 平成1年 (行ウ) 1 
裁判結果 認容(控訴)
出典 労働民例集41巻6号985頁/時報1399号136頁/タイムズ768号145頁/労働判例581号54頁/労経速報1427号3頁
審級関係 控訴審/05960/仙台高秋田支/平 3.11.20/平成2年(行コ)1号
評釈論文 中路義彦・平成3年度主要民事判例解説〔判例タイムズ臨時増刊790〕326~328頁1992年9月/道幸哲也・法学セミナー36巻11号147頁1991年11月
判決理由 〔労働契約-人事権-昇給・昇格〕
 企業において、管理職ポストは、企業の方針貫徹のための指揮命令系統の中枢を形成し、企業の人事権に本来委ねられるべきものであるから、右のようなポストにある人物を起用しないことが当該労働者にとって「不利益取扱」であるというためには、当該労働者の保有している条件の下では、通常、そのような昇格がほぼ例外なく行われていて、そのように処遇されないことが他の労働者に比較して待遇の上で公平を欠く、というような特別の事情が必要であり(このような場合は、企業のもつ人事権の裁量ということを考慮する必要がなくなる。)、そうでない場合(右のような特別な事情がない場合)は、単に労働者の側だけから見た不利益性判断と同時に、企業の側からする合理的な人事権の行使という観点からの考察が不可決となるからである。〔中略〕
 組織体における指揮命令系統のラインに繋がるポスト、とりわけ上級職制にどのような人物をもって充てるかは、通常、当該組織体の運営にとって最重要の位置付けを有するものと思料され、本来、その組織体の運営に責任を有する機関が、当該組織体を円滑に運営するため、自らの意思で、その責任において決定すべき人事権の行使であって、本来、使用者の専権に属すべき筋合いである。したがって、当該組織体の運営、経営について何等の最終的責任を保有する訳ではない第三者機関が、具体的ポストを指定してこれを当該企業に命ずることは、通常、当該組織体の運営、人事権に介入する結果となるのであって、ある条件の下ではそのような昇格が例外なく行われるというような特別の事情がない限り原則として許されないものと解するのが相当である。